ジュエルビースト戦inクジャ男子3人旅編

 

ほぼ実話プレイ日記SS風第8弾の続き。ジャミル・ダウド・エルマンのクジャラート男子3人組、ジュエビ決着なるか?!
毎度のことで申し訳ありませんが、くれぐれもジュエビ攻略の参考にはなさらぬようご注意願いますorz

 

 

ジャミルのオーヴァドライヴ後火の鳥で残りの柱を一掃した一行は、遂にジュエルビーストの眼前までたどり着いた。
すやすや寝息を立てている巨大蛙を目の前に、ダウドは震えあがる。「で、でっけぇ〜・・・・・・
こんなモン、本当に倒せるのかよぉ?」
「倒せるのか、じゃねぇぞダウド。倒すんだよ」
不敵に笑うジャミルだったが、エルマンはそれを窘めるように呟く。「兄さんの火の鳥5連発で柱は思いのほかうまくぶっ潰せましたが(最初の一本以外)、こいつはどうでしょうねぇ。さすがに3人だけで戦ったことはないっスから」
「心配すんなって。その為に俺はシムラクラムを覚え、ダウドがオーヴァドライヴを覚え、俺もダウドもリヴァイヴァを覚え、邪眼の魔除けもお前らの分揃え、古刀もロペラも強化したんだからな!」
「トマエ火山で散々修行してフライバイとかかと切りも覚えたよね。もうあの破砕流喰らうのヤダよおいら・・・・・・」
「でもねぇ、もうちょっと装備とか万端にしても良かった気もしますが。兄さんいささか急ぎすぎじゃないですかねぇ?」
「だから、奮発してダウドにフランシスカまで買ってやったんだろーが。ジュエビなんかさっさと倒しちまうに限るんだよ、いつ動き出すかなんてしょっちゅう気を揉んでるよりマシだろ! それに」
言いながら、ジャミルは懐から2本の薬瓶を取り出した。「こっちには、コレがあるんだよ」
目の前に突き付けられた、異様な発色の橙と紅の瓶。エルマンは糸目を少しだけ開いてしげしげと眺める。「こいつは・・・・・・戦士の秘薬と狂戦士の薬、ですかい? こんなもの、一体どうして」
「これをお前に使う、エルマン」「えぇえ!?」
「えぇえ、じゃねーって。今の所合成術抜きで一番ヤツにダメージを与えられそうなのはお前なんだよ、ダウドのオーヴァドライヴは恐らく回復用にも使わないといけないだろうしな」
「あ。そもそもダウドさんに使っちまったらオーヴァドライヴ出来なくなっちまいますもんね、狂戦士の薬は」
「その通り。戦士の秘薬は最初に使うが、狂戦士の薬は使い方に注意しろよ。セルバ張る前に使っちまったらアウトだからな、必ずセルバ張った後で使うんだ」
「ってことは、最後の追い込みぐらいにしか使えませんね・・・・・・もしくは、超絶追い込まれた時か。そんな状況にならんことを祈りますが」
「後は、ヤツの素早さ削り用。コイツだ」ジャミルは石斧を1本ずつ手渡していく。「ヤツが目覚めるまでは、コイツでかかと切りを使って出来る限りヤツの素早さを削れ」
「え? フランシスカじゃダメなのかよぉ」
「ダウド、お前のレベルじゃフランシスカでかかと切りをすると武器が傷む可能性がある。いざって時にフランシスカが壊れて使えませんでしたじゃあ、せっかくのオーヴァドライヴも高価な斧も意味ねぇだろ」



そんな作戦会議の後──遂に決戦の火蓋は切られた。
3人とはいえ、作戦は基本的にはこれまでと変わりはない。ジャミルがシムラクラムで雪だるま&聖杯役となり、重装兵たるエルマンは壁役と攻撃役を兼ねる。その中で、オーヴァドライヴを使えるダウドが回復に攻撃に縦横無尽に動く。エルマンはロペラ、ダウドはフランシスカで攻撃。覚醒まではエルマンが算盤でダメージ計算をしつつジュエビの状況を確認しながら、全員が石斧でかかと切り。その間にジャミルは全員にウェポンブレスとアーマーブレスをかける。
覚醒寸前となったらダウドにリヴァイヴァ、さらにエルマンに戦士の秘薬を使う。エルマンはセルフバーニングで自らを守る。ジャミルは雪だるまとなり聖杯を使う──これで、3人でもこれまで通りそこそこうまくいくだろう。そうジャミルは考えていた。
だが勿論、ジュエルビーストという怪物はそこまで甘くはなく。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てってオイ!! 覚醒した瞬間コズミックタイド2連発ってどーいうこった!!?? って、ウワアアアアアアアアっ!!!」
「ししし知りませんよ、これじゃいくら重装兵でも無理無理・・・・・・ギャアアアアアア!!!」
「ふふふ二人ともしっかりしてくれよぉ、散々準備したから大丈夫じゃなかったのかよぉ!? って、ひえぇえええええええ!!?」
3人を続けざまに襲う光の奔流。ラミアのエナジーボルトは勿論、タイラントの破砕流すらも上回る高威力の閃光の嵐──
ダウドがふと気がついた時には、静かだった洞窟は焦熱の地獄と化していた。
「え・・・・・・」
慌ててキョロキョロとあたりを見回しダウドは二人の姿を探す。そして背後の壁を振り返った時、彼はようやく現実に気づいた。
焼けた壁に黒コゲになってボロクズの如く張り付いていたのは、頼れる兄貴分と会計係の姿。二人とも完全に気絶しており、言葉を発する力さえも失っている。
「ど、どうして!? どうしておいらだけ生き残って・・・・・・!」パニックに陥りかけたダウドだが、そこで気づいた。ジュエビが暴れ始める寸前、自分にはリヴァイヴァをかけていたことを。
エルマンはセルフバーニング、ジャミルはシムラクラムをそれぞれ自分にかけていた為にリヴァイヴァが張れず、さらに言うと一度目のコズミックタイドはジャミルの召喚した雪だるまを一撃で破壊し、そして二度目のコズミックタイドは雪だるまを溶かされたジャミル自身をも吹っ飛ばしていたのである。ついでに言えば、いかに重装兵とはいえエルマンがこの絶望的破壊力の2撃に耐えられないのは当たり前の話だった。
「そんな! だって、雪だるまはおいらたちよりずっと速いし強いって話だったじゃないか! なのに・・・・・・」
生き残ったのは、唯一リヴァイヴァを張っていた自分だけ。こんな状況に対処するにはどうすればいいのか──ジャミルもエルマンも何も答えてはくれない。目の前の恐るべき巨獣を相手に、ダウドはたった一人で立ち向かわねばならなかった。
「って、できるはずないじゃないか! おいらに、どーやってこんなの倒せってのさ!」
そんなダウドの脳裏で、ジャミルの言葉がよみがえる。
──ジュエルビーストを倒すこの旅で、お前は必ず見るはずだ。俺とエルマンがどう戦うかを。そして、どう『戦ってきた』かを。
──そいつを見届けることが出来て初めて、お前は真実を受け入れられる。
ダウドは薄々気づいていた。ジャミルとエルマンが、恐らく何度も何度もこの怪物と戦ってきたであろうことを。
この二人の用意周到ぶり。そしてこれまでの、デスティニィストーンを巡る戦いにおける注意深さを見ていれば、二人がここに来るまでに幾多の難関を乗り越えてきたであろうことはすぐ分かる。一度封印すればいいはずなのに、どうしてこんな怪物と何度も戦うハメになっているのか──その理由は皆目思い当たらないけれども。
だが今の状況が示すとおり、恐らくジャミルとエルマンの二人だけでは、この化物は倒せなかったはずだ。他に多くの手助けがあったから、彼らは今に至ることが出来たのだろう。
──ダウドさんもいなきゃー、絶対に無理っすからね!
あのエルマンの言葉は決して冗談半分でも何でもなく、本気の本気で出た発言だったのだ。自分がそんなに役に立てることなんて、あるわけないと思っていたのに。
「で、でも、おいらに出来ることなんて」震えあがりながらも、ダウドは脳内で必死で自分の手持ちのカードを探る。答えはただ一つだったが──そのカードを出すより遥かに速く、ジュエルビーストが動いた。
「う・・・・・・ぎゃあああああああっ!!!???」ダウドの周りに、巨大な目玉の幻影が幾つも幾つも浮かび上がる。
「マルチプレックスアイ」。呪われた目玉の眼力によって相手を麻痺させてしまう、ジュエビの必殺技の一つがダウドを襲った。だが──
「へ、へへへ! こっちには、これがあるんだぜ!!」咄嗟に彼がかざした邪眼の魔除けが、血走った眼球の幻覚を全て打ち払った。幸いにして他の攻撃は来ない。ダウドはそのスキに、遂に時間操作術オーヴァドライヴを発動させた。
「や、やった!」
これでジュエビの動きは止まった。だがその次に何をすればいい? 行動チャンスは5回もあるが、同系統の技か術に限られる。つまり原則、攻撃するなら攻撃しか、回復するなら回復しか出来ない。しかしダウドの決断は意外に速かった。
「おいらが今攻撃したって、こんなヤツ倒せっこないし!」殆ど迷うことなく、彼は癒しの水をジャミルとエルマンにかけていく。ボロ布のように壁から垂れ下がっているばかりだった二人は、ダウドの強い癒しの力を持った水術で瞬時に起き上がった。
「な、何とか助かったなオイ・・・・・・まだまだやってやるぜ、畜生!」
「ダウドさん、ありがとうございますっ!! つっても兄さん、これじゃ最初から色々やり直しっすよぉ・・・・・・戦士の秘薬もなくなっちまいましたし」
「だけど俺たちゃ生き返ったんだ、このチャンスを無にするこたぁねぇぜ! なぁダウド!!」
ジャミルは全く諦める様子もなく、再び聖杯の発動体勢に入る。エルマンも負けじと錬気の構えを取った。「ダウドさん、私にアーマーブレスをもう一度! お願いしますっ!」
「わ、分かった!」言っている間にもエルマンに対してジュエルビーストの拳が叩きつけられる。ダウドは思わず悲鳴を上げながら眼をつぶりかけたが──エルマンは怯まなかった。「こんなもの、こっちはもう見切らせていただいてるんでねぇ!」
普通の人間なら一撃で骨も残さず蟻の如く潰されてしまうその拳を、ちょうど防御体勢だったエルマンは見事に耐えてみせた。そこへさらにもう一撃──「え、エルマン! 逃げてぇえ!!」
「冗談じゃない。私しゃ明朗会計がモットーなんで、おつりはきっちりお返ししますヨ!」エルマンは瞬時に身体をひるがえし巨獣の拳を躱すと、反動を利用して渾身の力で自らの拳を叩き込む。
そのさまは、まるで伝説の奥義──羅刹掌にも似ていた。「す、すっげぇ・・・・・・ジャミルぅ、やっぱりおいらも重装兵にしてくれよぉ!!」
「いや、ですからダウドさん!? いくら重装兵でも痛いもんは痛いんですって、今だって私の石頭じゃなけりゃどうなってたか!」叫ぶエルマンの額からは、一撃目による傷なのかどくどくと血が流れ出していた。
「ご、ごめん!」言いながらダウドはアーマーブレスをエルマンにかける。「よし、これでアーマーブレスと錬気がかかって・・・・・・あとはセルバと狂戦士の薬、ウェポンブレスがかかりゃ完璧なんすけどねぇ。戦士の秘薬がもったいないったらありゃしないっす」
「ぶつくさうるせぇぞ、これで流れはこっちのもんだ!」ジャミルが聖杯をかかげると、3人の身体に一気に力が戻ってくる。怒涛の如き術法攻撃が3人に襲いかかったが、幸か不幸かその攻撃は全てエルマンに集中した。ウインドカッターで吹っ飛ばされ、エナジーボルトで激しい電撃を喰らいながらもエルマンは何とか耐える。「ひぃ、はぁ、ふぅ・・・・・・れ、錬気やっといて良かったっす」
その間にジャミルは再び雪だるまに変身し、さらにもう一度ダウドはオーヴァドライヴを発動させた。
「今度は攻撃できるっ! おいらの無敵の一人連携、くらえ!」
ジャミルとエルマンが復帰した今なら、行けるかもしれない。そう確信しきったダウドはフランシスカを携え飛び上がる。ジュエルビースト攻略には最早おなじみとなった、フライバイとかかと切りの一人連携だった──ダウドはさらにそこから陣まで出してみせたのである。そのあまりの威力に、怪物は思わず天を見上げて悲鳴に似た雄叫びを上げた。
「おぉ、素晴らしいっす! 何のかんの言ってもダウドさん、貴方の腕力凄いですからねぇ!!」
雪だるま化して無言になってしまったジャミルの代わりに、エルマンがダウドを手放しで褒める。「そ、そうなの? おいら自分じゃあまり分からないけど・・・・・・」
「攻撃も回復も行ける遊撃手的な役がいないと、とてもこんなバケモンは倒せませんからねぇ。ダウドさんはBPも申し分ないですし腕力も体力も素早さもありますしおまけに愛も素晴らしいっすから、羨ましいですよっ」
「羨ましい? おいら・・・・・・そんなこと、言われたの初めてだ」
エルマンの言葉に、ダウドは思わず赤くなる。お前ら戦闘中何やってんだとばかりにジャミル(雪だるま)が癒しの水をエルマンに注いだが、エルマンは商人の性なのか、ダウドの持ち上げをやめなかった。
「実際そうっすよ?
兄さんなんか愛がないもんだから、こうやって雪だるまに頼らん限りしょーもない回復量ですし。
私なんか素早さがそれ以上に致命的っすから、戦闘中はこうして肉壁になるのが一番だとか言われちまってね。
その点ダウドさんは・・・・・・っ!」
ふと眼前を見ると、巨獣の姿が一瞬消えていた。「え!? あ、あいつは・・・・・・」「ダウドさん気をつけて! 上っす!」
3人の頭上に不吉極まる影がさす──その正体は、飛翔した巨大ガエル。その巨体でどうやってそこまで飛べるのか全く疑問なほどジュエルビーストは空高く飛び上がり、一瞬後には3人をその重量で一息に押し潰していた。
だがそれでも──3人はまだ倒れない。ギリギリで踏みとどまり、ダウドは自分に再びリヴァイヴァをかけ、エルマンは共震剣をぶっ放す。
このような調子でジュエルビーストの圧倒的な攻撃を凌ぎつつ、ジャミル(雪だるま)は聖杯および癒しの水による仲間回復、ダウドはオーヴァドライヴからのフランシスカによる攻撃、エルマンは壁となりつつロペラでの攻撃を続けた。
だがそれでも、単純計算でこれまでの6割まで減った戦力は、この怪物に致命傷を与えるには至らず──3人は絶望的すぎる巨獣のパワーに徐々に押されていく。
最初に限界が訪れたのは、ダウドのフランシスカだった。何度目かにオーヴァドライヴして一人5連携を決めた直後、帝国でも最高の攻撃力を誇る片手斧の刃はぼろぼろと崩れ去ってしまった。「えぇえ!? も、もう使えないのかよ!?」
「仕方ありません、ダウドさんは石斧で攻撃を! あとちょっとのはずなんすけど、やっぱりこちらの火力が足りないっすよねぇ・・・・・・」いつもはどうやっても笑顔にしか見えないエルマンの横顔にも、流石に焦りが見え始める。
そんな瞬間だった。巨獣の双眸がギロリと光ったかと思うと、雪だるま化していたジャミルを睨みつける。その周囲に現れる無数の血走った眼球──マルチプレックスアイ。その呪いに、まんまと雪だるまはかかってしまった。
「や、やばいよぉおおお! ジャミル(雪だるま)が固まっちゃったよ、早く回復させないと!!」
「無理っす、雪だるま化している間は癒しの水も浄化の水も受け付けません! 自然回復を待つか、もしくは──」
エルマンがその先を説明する必要はなかった。ヘルファイアにエナジーボルトの連携を喰らって見事に雪だるまは溶けてジャミルに戻ってしまったのである。
「じゃ、ジャミル!?」「大丈夫だ、これで聖杯も元に戻って麻痺も解けて願ったり叶ったりだぜ! 行くぞ二人とも!!」
だが──ジャミルが聖杯を掲げたその瞬間。
またしてもジュエビは空高く飛翔し、3人を押しつぶす。しかも一撃では飽き足らず、彼らに絶望の悲鳴を上げるような慈悲すら与えず、巨獣は素早く再び大地を蹴り飛ばし、とどめとばかりに脆弱な人間たちの身体を圧潰させた。
立っていられたのは、リヴァイヴァで何とか生きながらえたダウドと、この2撃を唯一耐えうる防御力を誇るエルマンだけ。無防備だったジャミルは見事に血まみれとなってぶっ倒れており、もはや呼吸しているのかすら怪しかった。
「たたたた大変だ! ジャミルを早く回復させないと!!!」
ダウドが慌てて水術の体勢に入ろうとしたが、それをエルマンが止めた。「待ってください、ダウドさん」
「え・・・・・・? どうしてだよ!?」
眼前の憎き巨大ガエルをその糸目で睨みながら、エルマンは妙に冷静だった。「今から私、セルフバーニングを張ります。その後で狂戦士の薬を私に使ってください」
「だから何で!? 今回復させずに、いつジャミルを治すんだよ!?」
「そんな余裕、ありませんよ」その出っ歯に全く似合わない冷酷な言葉が、彼の口から飛び出した。「ヤツの残りHPは恐らく1万を切っています。ここまで来たら、味方を回復させるよりこのまま押した方が安全です」
「で、で、でも! またあんな攻撃連発されたら、ジャミル死んじゃうよ!」「そうなる前に倒すんす! ヤツをぶっ潰すのが早いか、兄さんの命が消えるのが早いか、こいつはその勝負なんですよ!!」
叫びながらエルマンは自らに炎の盾を張り、素早くロペラを構え直す──そんな彼に火幻術とヘルファイアとエナジーボルトが連続で襲いかかり、隕石でも墜落したかというほどの大爆発を起こした。
「早く! ダウドさん!」炎の盾で強烈な爆風を防ぎつつエナジーボルトの電撃に耐えながら、エルマンは絶叫する。だがダウドはどうしても納得できない。「無理だ、ジャミルを見捨てるくらいならもう逃げようよ!」
「バカ言わんで下さい! ここまでヤツを覚醒させちまったら、最早倒す以外ないんです!! 今逃げちまったら、ヤツはここから動き出してフロンティア中を」
「何でそんなことが分かるんだよ、おかしいよ!!」何も出来ずに泣き叫びかかるダウド──そんな彼のズボンの裾をむんずと掴む手があった。「うわぁあぁっ!? って、ジャミル!?」
殆ど動けないはずの血みどろのジャミルが、地を這いずりながら言葉を振り絞っていた。「全く・・・・・・おかしいのはお前だろ。いつもは俺なんか放り出してとっとと逃げる癖に、こんな時だけ何やってんだ」
「だって、ジャミル!」「だってもクソもねぇ、エルマンの言う通りにするんだ。でなきゃ、俺だけじゃなくお前らも死ぬぞ!」
血を吐きながらジャミルは懸命にダウドに訴える。掌の血までが、ダウドの服に染みこんだ。すぐ横ではエルマンが、巨大ガエルのウインドカッターに吹っ飛ばされながらも、返す刀で変幻自在を叩き込んでいる。倒れる寸前でジャミルが掲げた聖杯のおかげでBPが回復し、細剣の最強奥義とも言える変幻自在をエルマンがある程度撃てるようになっていたのは不幸中の幸いと言えた。
「だがエルマンのロペラだってもうすぐ壊れちまう、そうなる前に薬でも何でも使って少しでもあいつの力を上げるんだ!」
「わ、分かったよジャミル・・・・・・こんちくしょー!!」
ほぼヤケクソ気味にダウドは、蛍光色まで入っていると思われるどぎつい赤の薬瓶──狂戦士の薬の栓をこじ開けて、エルマンに向かって投げつける。エルマンに当たる直前に空中で弾けたその瓶は、その頭上に真っ赤な重い蒸気を滴らせた。
冥界に住むと言われる冥府人参の放つ死人ゴケ。浴びた者を完全に発狂させるその猛毒を多少中和して一つの瓶に濃縮して押し込めたのがこの狂戦士の薬である。
これをまともに浴びたエルマンの攻撃力は大幅に上がったが、その代償に術を唱えることが不可能になってしまった。中和したとはいえ毒は毒、使用者は発狂までは至らないもののほぼ理性が飛んでしまう。ジャミルが最初、セルフバーニングを先にと指示したのはこの為だった。
エルマンはそのまま恐るべき勢いで飛び出し、再び変幻自在で巨大ガエルを切り刻む。巨獣も負けじとマルチプレックスアイでエルマンとダウドを凝固させようとしたが、2人とも邪眼の魔除けを装着していたため全くの無傷ですんだ。
「こ、こりゃラッキーでしたよ! ダウドさん、すぐにご自分にリヴァイヴァを! その後で出来れば私にウェポンブレスをお願いしますっ!」
猛烈に自身から立ちこめる、血のように赤く炎のように激しい蒸気。理性を吹き飛ばすその毒気に耐えつつも、エルマンはダウドに指示を送る。襲いかかる巨獣のヘルファイアに火幻術。だが炎の盾でそれらを全て弾き、さらに防御体勢を取ったエルマンはすぐさま共震剣を放った。ミサイルでも爆発したかというほどの衝撃が洞窟全体を震わせる──
──どうして。
過度の力の膨張による全身の痛みに耐えながら、エルマンは炎の中で剣を振るい続ける。最早それを見守ることしか出来ないダウドの中で、疑問符が駆けめぐる。
──どうして、そこまで出来るんだよ? これじゃ、こんなんじゃ、まるでエルマンは・・・・・・!!
だが、そんなダウドの心の隙を見逃すジュエルビーストではなかった。
人間の抵抗に怒り狂った巨獣はまたしても彼らの頭上へ、高々と飛び跳ねる。洞窟どころか大陸全てを崩壊させかねないほどの地響きがその場に轟き──
かくして、リヴァイヴァの発動が遅れたダウド、そして既に動くことが出来ないジャミルまでもが巨獣の腹の下敷きとなり潰れてしまった。
残っていたのは勿論、肩と口で激しく息をしつつどうにか防御姿勢を取っていた会計係のみ。「し、し、仕方ありませんねぇ・・・・・・ウェポンブレスは諦めますか。全く、もぉお・・・・・・!!」
半泣き状態で出っ歯が折れるかと思うほど歯ぎしりしつつ、エルマンは再びロペラで共震剣を巨獣の外皮に叩き込む──だがその瞬間、帝国皇室伝統の細剣は根元からガラスの如く粉砕されてしまった。
「あ、あ、ああああ・・・・・・駄目だ、もう駄目だぁ、もうこんなの絶対に駄目だああああ!!」血まみれで倒れ伏しつつもその様子を見守っていたダウドだったが、遂に耐えきれなくなり絶叫してしまう。
フロンティアなんかどうなったっていい、怪物を目覚めさせてしまった大悪人どもと罵られたってもう構わない、タルミッタまで駄目になろうが構うもんか、エスタミルの地下まで逃げ込めば何とかなるだろう? 
だからジャミル、エルマン、お願いだからもう逃げよう! ──そう叫びたかったが、ダウドにはもうその必死な思いを伝えられるだけの力は残っていなかった。
そんな彼の目の前で、エルマンはロペラを投げ捨てる。当然諦めたわけではなく──その手には壊れたロペラの代わりに、大地の剣が握られていた。
「まさか・・・・・・エルマン!?」
大地の剣が炎のロッド同様、使用者の血を吸収してその威力を発揮するいわゆる術具であることは、ダウドも知っている。その眼前でエルマンは躊躇うことなく、剣の柄に取り付けられた小さな鉤爪を自らの手首内側に喰いこませた。
溢れ出る膨大な量の血液。それは瞬く間に剣に吸収され、刀身を光輝かせる。その光は、バーバラから譲り受けたアメジストの紫にも似ていた。バーバラとエルマンたちの運命を、そして全ての仲間たちの運命を変えてしまったデスティニィストーンの輝きに。
「駄目だよエルマン! そんな状態で共震剣なんかやったら、死んじゃうだろ!!」
「大丈夫っすダウドさん、私のLPはまだまだありますからね! どこぞの兄さんと違って!!」
同時に巨獣がまたまたまた飛翔する。だがエルマンは怯まず、輝く剣の勢いもそのままに、再び共震剣を怪物の腹めがけて叩きつけた。
怪物の凄まじき重量と剣の超高速震動が激しく拮抗し、エルマンの手首からはその血が洪水の如く噴出する。最早文字に変換出来ないほどの絶叫を上げながら、自らの血をまき散らしてその小さな身体だけで巨大ガエルに抗う。
そして遂に、ジュエルビーストの分厚い腹の皮膚をその剣が貫通し、一瞬大きくのけぞった巨獣は明らかに悲鳴と分かるダミ声を洞窟に轟かせた。勢いよく噴き出した紫の体液があたりを染める。
「や、やった・・・・・・の?!」ダウドは思わず顔を上げる。だがその肩を力まかせに掴み引き戻す手があった。「まだだ、まだ油断すんじゃねぇ!」
ただの肉塊同然だったはずのジャミルが、どうにか頭だけ上げてダウドを制止している。最早巨大ガエルは崩壊寸前のようにも思え、エルマンもわずかに防御の姿勢を解きつつあり──というより、彼も力尽きて倒れる寸前だった。
だがこのような瞬間が最も危険であることを、ジャミルは自らの経験で幾度も思い知っている。エルマンもそれは同様のはずだったが、悲しいかな彼には最早そう判断出来るだけの気力も体力も理性も残っておらず──
結果として、滝のように流れ落ちてくるジュエルビーストの体液の下で、エルマンは呆然と力なく立ち尽くしてしまっていた。一瞬だけとはいえ、これはあまりにも危険なことには違いなく。
「馬鹿野郎! エルマン、上だ!!」
ジャミルの叫びがなければ、彼はそのままふらふらと重力に任せて倒れていただろう。弾かれたようにエルマンは慌てて防御体勢を取りつつ頭上を見て──その糸目が、恐怖にはっきりと歪んだ。
彼の眼前に迫っていたのは、あまりにも大きく紅く、最奥の口蓋垂(いわゆるのどちんこ)までがはっきりと見えるほどぱっくりと開かれた、巨獣の口腔。上顎から覗く、獲物を噛み砕かんとする汚れた歯。
そこまで彼が認識した瞬間にはもう、既にエルマンの身体はいとも簡単にジュエルビーストの舌に絡め取られ──何の抵抗も許されず、その口へと放り込まれた。
ジャミルとダウドの眼前で、エルマンのちぎれた靴と左手首が宙を舞う。あまりの現実にダウドの心は耐えきれず、発狂寸前の叫びをあげるしかなかった。





「ぎ、ギヤアアアアアア! たたたた助けてくださいいぃ、兄さん、姐さーん!!!」
ジュエビの口腔奥深くへとその舌で追いやられたエルマン。一瞬のうちに丸のみされた彼は一気に巨大ガエルの食道から内臓付近にまで追い込まれていた。
ジュエビの唾液まみれになった身体に、さらに無数の絨毛が触手の如く皮膚といわず服といわずベタベタ張りつき絡みついてエルマンの動きを止める。その上大量の粘液が、奥から洪水のように溢れ出てきた──
「あれは・・・・・・ままままさか、胃液ってヤツですかアァアア!!?? やややめて下さいヒィイィ」ジタバタ暴れて絨毛を振り払おうとするエルマンだったが、四方八方から絨毛は顔に手足に巻きついてくる。無防備になった身体に、粘り気のある胃液が容赦なく襲いかかった。「い、痛い痛いイダダダダダダ!! ちょ、やめ、後生ですからそこはやめて・・・・・・っっ!!」
ジュエビに噛まれた瞬間に彼は左手首と右足首を持っていかれていたが、勿論その切断面にも胃液は浸み込んでいく。普段であれば飛び上がっていたであろうほどの痛みが全身を貫いたが、最早飛び上がれるほどのスペースも体力も今のエルマンにはない。
激しい熱をもって服も帽子も少しずつ溶かされ、さらにその下の皮膚をも焼かれていく。自分の肉が焼けていく恐怖と激痛と酷い臭いに震えあがりながら、エルマンは全身を縮こまらせて祈るように呟いていた。
「あ、あ、姐さん・・・・・・頼んます、何でもします、もう欲張ったりしませんから、馬の世話さぼったりしませんから、たまにゃ奮発して節約メニューじゃないおいしい物作りますから、だから、助けて・・・・・・助けて」
その祈りも届くことはなく、香ばしい臭いと音を立てて服と皮膚が剥がされていく。手足に絡みついた絨毛は少しずつエルマンを奥へ奥へと引っ張り、更なる奈落へと追い込んでいく。
そしてとどめとばかりに、あのマルチプレックスアイにも似た巨大な眼球がエルマンの眼前に現れた。「ヒエェッ!?」
それも先ほどまでのような幻でもなんでもなく本物の眼球のようで、圧倒的な質量をもってエルマンを押し潰す。恐怖と圧迫で息が止まりそうになりながらもまだエルマンはジタバタと虚しい抵抗を続けていた──が。
「あ・・・・・・あれは!?」恐らく胃の方向であろう、大量の毒液が噴出してくるその奥に、エルマンは見覚えのある小さな光を見た。巨大眼球で潰される寸前ながらも、エルマンは考える。「まさか、あの光・・・・・・間違いないっす!!」
ほんの小さな小さな光ではあったが、それでもエルマンの豊富な知識を総動員してかかればその正体を突き止めるのは容易いことだった。そしてそれは息も絶え絶えだった彼を思わず開眼させるほどの力をもつ光であり。
まだ右手に輝いていた大地の剣を再び握りしめると、さらに重力を込めてくる眼球を押し戻すようにしてエルマンは匍匐前進を始めた。──光の方向へ。
「全く、あんなところにあったんですね。道理でいつも妙にベタつくと思ってましたよ・・・・・・って、うはぁっ!?」そんな彼の真正面から、波のように襲いかかってくる毒液。顔だけは何とか腕でガードしたが、相応の防御力を誇る小手・ドミナントグラブは既にドロドロに溶けかかっていた。それでもエルマンは大地の剣で絨毛を斬りとばしながら這いつくばって進む。自分が溶かされるのが先か、アレをゲットするのが先か──右手は剣で塞がり左手は手首から先が失われている状態ではあったが、それでも。
「手なんぞなくったってねぇ・・・・・・私にゃ、私だけが使える武器があるんですよっ!!」





ジャミルとダウドの眼前で、エルマンを呑みこんだジュエルビースト。
噛み砕かれてもなお数秒の間、巨大ガエルの喉の奥から彼の悲鳴が聞こえていたが、しばらくするとそれも聞こえなくなった。巨獣はゆっくりと頭を上げると、気持ちよさそうに一旦目を閉じる。その喉に出現した一つの凹凸が塊となり、ジュエルビーストの喉から腹へと移動する──ごくりという鈍い音と共に。
ダウドはもう悲鳴すらも上げられず、へたり込みながらその光景を凝視しているしかなかった。
もう、もう駄目だ。最悪だ。自分もジャミルも数秒後にはエルマンと同じようにあいつに呑まれて、あいつはフロンティアどころかエスタミルまで暴れまわって──
だがその横から、突然ジャミルが飛び出していく。さっきまでずっと倒れたままだったジャミルが、傷だらけの身体もそのままに炎のロッドを手にジュエルビーストに飛びかかっていった。
「畜生・・・・・・許さねぇぞ、てめぇ!!」無謀にもジャミルは何の防御もせずに、怒りに任せてひたすらジュエビの腹を切り刻もうとする。斬撃武器として使用するには比較的繊細な部類に入る炎のロッドではとても巨大ガエルに致命傷を与えるには至らなかったが、それでもジャミルの憤怒は止まらない。「返せ、返せ、返せ・・・・・・エルマンを返しやがれ、クソ蛙!!!」
完全に普段の冷静さを失い、頭に血が昇っているジャミルは狂ったようにロッドを振るい続ける。手足の骨を粉砕され、身体中血まみれのはずなのに、それでも。
そうだ。ジャミルは、いつだってそうだった。大切な仲間を傷つけられた時や失った時はいつでも、あんな風に我を失って──
──許さねぇぞ・・・・・・!!
どこだろう? どこかで確かに、同じようにジャミルが怒り狂った瞬間を見ていたような気がする。それも、自分のものすごく近くで。一体どこで?
しかし、ダウドがその記憶に想いを馳せている余裕は勿論与えられず──ジュエルビーストは片腕をゆっくりと振り上げた。
決死の抵抗を続けるジャミルに、無情にも振りおろされていくその拳。あんなものを喰らったら、今度こそジャミルは木端微塵にされてしまう。「ジャミル! 逃げ・・・・・・!!!」
半狂乱になって叫ぶダウド。拳に気づきながらも、とても身体が動かず避けられないジャミル。本当に絶体絶命かと思われたその瞬間──
ジュエルビーストの動きが、止まった。
苦しげに喉元をかきむしる仕草を始めたかと思うと、巨獣は頭を大きく振り上げて苦悶の雄叫びを上げる。その身体の奥深くに吸収されたはずの先ほどの塊が、どういうわけか巨獣のちょうど腹のあたりで大きく膨らんだ。
次の瞬間、膨張しきったその塊は大爆発を起こす。カエルの凄まじく狂った鳴き声が、地響きとなって洞窟全体を揺らし──その爆発の中から黄色い何かが勢いよく飛び出してくる。
ドロドロの白濁液に塗れてはいたが、それは間違いなく、大地の剣による共震剣を放った──黄色い帽子の糸目の会計係・エルマンだった。
彼が脱出に成功し地べたに思い切り墜落した直後、ジュエルビーストは最期の絶叫を上げ、爆散した。



サルーインによってデスティニィストーンを無造作に埋め込まれ、凶暴化した巨大ガエル。それが爆発するさまは凄まじいものだった。
ジュエルビースト本体のみならず、埋め込まれたデスティニィストーンまでが次々に閃光となって散っていく。粉みじんに砕けてもその不思議な力を持つ宝石はしばらく光となって空中に浮遊し、やがて地上へ雪のように降りそそいだ。先ほどまで、血みどろの戦いが繰り広げられていた洞窟へ。
デスティニィストーンの欠片は、ひらひらと舞い落ちながらやがて静かに熱を持ち、燐火にも似た小さな炎と化して壁へ、土へと落ちていく。それはまるで、空中からいつまでも降りそそぎ続ける花火にも似ていた。
ちょっとした祭りのような光の饗宴に、ダウドはジャミルに癒しの水を施しつつも呆然とするしかなかった。「すっげぇ──こんな景色、見たことねぇ」
降りやまない光の中で、むくりと身体を起こす小さな影。ダウドは思わず声を上げかかるが──「エルマ・・・・・・え?」
そこにいるのは、確かにエルマンのはずだ。はずなのだが、ダウドの声はそこで止まってしまった。
光があまりに激しくて良く見えないが、大きく両側に膨らんでいたあの象徴的な帽子は片側の膨らみが見事に吹き飛び、服は上半身の半分ほどが溶け落ち、その残骸が力なく光の中で揺れている。大地の剣を持ったままの右腕は肩から指先に至るまで血まみれで、では左腕はと見ると、そもそも手首から先が消失していた。
何より、彼の全身の皮膚──光のおかげでよく見えなかったのは正解だったかも知れない。
ちらりと見えた右半身を確認した限りでは、右腕の皮膚は肩からほぼ全てが剥がれ落ちて破れた服と同化しており、思い切り肉が露出していた。どうにか膝立ちをしているらしき下半身は殆ど見えなかったが、右足首の切断部分からは骨の断面と思われる白いものが僅かに見えた。
そんな状態でありながら、エルマンはゆっくりとジャミルとダウドの方向へ首を回す。
壊れた機械を思わせる挙動──ギギギと油切れの音でもしそうなほど首を曲げたエルマン。いつもの糸目はいつもとは違いほんの少し開かれており──白目の面積がその殆どを占める眼球が、ダウドを見る。
血まみれの顔の中で、その白目だけが何故か異様に光っていた。大きな白目の中に申し訳程度に小さくくっついている黒目が、じっとこちらを見つめ──その大口が、ニタリと歪んで耳まで裂けた。
「へ、へへへ・・・・・・こんなのやっぱり、割に合わないっすねぇ」
ダウドは反射的に思い出した。幼い頃に見た見世物小屋のピエロ──笑っているはずなのに何故か無表情のように思えて、剽軽な動作でおいらたちを楽しませようとしているはずなのに、何を考えているのかさっぱり分からなくて、それが怖くておいらは大泣きしてジャミルやファラに笑われて。あの顔のペインティングも、血のように見えて──まんま、今のエルマンじゃないか!
その上最悪なことに、エルマンの今の姿はダウドに更なるトラウマを思い出させていた。エスタミルの地下下水の奥で出くわした、ゾンビの大群──あの皮膚、あの首の動き、そのままじゃないか。
エルマンのすぐ後ろでまた一つ、デスティニィストーンの破片が空中で炎を上げる。揺らめく光が、彼の剥きだしの白目をうっすらと青磁色に染めた。
がくがく震えだした両脚が、一歩、二歩と自然と後退していく。極限状態からようやく脱した直後で感情の制御がほぼ効かなくなっていたダウドは、偽らざる本心をそのまま口に出してしまっていた。
「ば・・・・・・ばけも、の・・・・・・」
恐ろしいほどの静寂の中、ダウドの呟きは不思議と反響して意外に大きな声となった。
その言葉がエルマンに聞こえたかどうかまでは分からない。だが、自分をまっすぐ見つめてくる小さな黒目がほんの少しだけ歪んだ──そんな気がした。
だがそんなダウドの戸惑いを全てぶった切るように、全く躊躇うことなくジャミルが飛び出していく。彼自身も深手には違いないのに、それでも。
「バッカ野郎!! 
びっくりさせんじゃねー、てっきり死んだと思ったじゃねーか!!」
「え?! に、兄さん!?」
ジャミルはそのままエルマンに突進すると、勢いよく全身で彼に飛びついた。「えぇええ!? ちょちょちょっと兄さん一応私大火傷してるんで、あんまり触らんで下さい痛い痛いヒィイイ」
「いーじゃねぇか、喜べよ! 3人でジュエビ倒すなんて快挙も快挙、俺たちゃこれ以上ありえない大勇者様だぜ!!? こんな火傷、俺の癒しの水でホレ、ちょちょいだ」
「あーもう・・・・・・何スかコレ、相変わらず愛のない癒しの水っすねぇ」
ジャミルはエルマンを抱きかかえたまま、その背中に水術を施す。悪態をつきつつも、エルマンは心の底から安心したように笑っていた。
「んだと、これでも前の周よりは愛は上がってんだぜ? それより俺にもムーンライトヒール頼むぜ、愛の溢れる会計さんよぉ」
言いながら両足を放り出すジャミル。エルマンは面倒そうながらも光術を発動させ、丁寧に彼の怪我を診ていく。「しょうがないですねぇ・・・・・・
って、兄さん手も足も骨グッシャグシャじゃないッスか!!? 一体どーしたんスかコレ、右脚なんか超絶ありえん方向に曲がって、うへぇ・・・・・・見てるだけで気分が」
「お前のせいだろ、こちとらどんだけ心配したと思ってんだ? お前こそそのカッコのまんまウエストエンドに帰るんじゃねぇぞ、間違いなく警備隊にとっつかまるからな!」
「へ? 何でですかい」
「無駄にデカいナニが破れ目からチラチラ見えてんだよ、ヘタすると裸ソックスよりひでぇ恰好だぞ今のお前」
「・・・・・・って、ヒアアアアアッ!!?? まままままさかここまで溶かされてたとは、ににに兄さんお願いですからじろじろ見んで下さいよ! あぁもう腰布も帯も殆どやられちまって!」
真っ赤になって慌てふためきつつ、エルマンは残り少ない布で前を隠そうとする。「えぇと、ここをこーしてこーしてこーすりゃ何とかかんとか・・・・・・」
「ったく、ヤロー同士で何を恥ずかしがってんだか。あーあ、これがクローディアかアイシャか親分かミリアムだったら、読者も大喜びだろうにな。こーいうのって全裸よりエロいって言うし」
「兄さん、次そーいうこと言ったら彼女たちに言いつけますぜ? って、ぎゃあぁあああ道具袋も破れて中の小銭が、小銭があああぁああ!!!」
いつものように金銭関連で騒ぎまくる彼を見ながら、ジャミルは吹き出した。「しっかし、LPが高いとナニも・・・・・・って噂、ありゃやっぱ本当みたいだな」
「全く、何で兄さん相手だとそーいう下品な話になるんスか! LPは私の数少ない取り柄なんすからそのテの話に持ってくのはやめてくれと前から」
「別にいいじゃねぇか、何ならダウドに聞いてみろよ。なぁダウド、お前だって相当だもんなぁ?」
ぽかんとしたまま二人のやりとりを眺めていたダウドは、突然振られて戸惑ってしまった。「え? い、いや、おいら・・・・・・」
──やっぱりおいらは、駄目なヤツだ。
ジャミルは何の躊躇もなしにエルマンを受け入れたのに、おいらは!
「帰ろうよ、ジャミル。
ジュエルビーストは倒したんだ。もう、おいらがここにいる理由もないだろ?」
ダウドは二人に顔を合わせられず、そのまま背を向けて洞窟を去ろうとする。そんな彼に、ジャミルはすかさず声をかけた。
「ダウド、お前は確かにちゃんとジュエルビーストを倒した。俺たちと一緒に。だから、約束だ。
お前にはちゃんと俺たちの話を聞いてもらうぜ。どんだけ嫌がろうと、お前には俺たちについてきてもらう。
俺は決めてんだ。もう絶対に、お前を手放したりしないってな」





クジャ男子3人ブラ珍マルディアス旅〜真サル挑戦編〜へ つづく


 


 

 

 

最初は軽い気持ちで始めたはずが、何故だか明らかに残虐描写&エルマン苛め激化の一途をたどるこのシリーズ。だけど弁解するわけじゃないですが、3人旅でジュエビ封印しようとかやったらこうもなるわ畜生めぇー!!(半ギレ)
というわけで、上記SSの描写もやっぱりほぼ実プレイに忠実です。こんなの絶対おかしいよ!と叫びたくなる瞬間はジュエビ戦じゃ幾らでもあるわけですが今回は特にそれが酷かった。上では書けませんでしたが、一度なんかダウド君はODからの衝突剣&かすみ二段(大地の剣)を連発した挙句にLP0になったし。詳細は色々とブログにも書きましたが。
マルチプレックスアイの連発がなけりゃ絶対に勝てなかった。デレ蛙万歳。
そしてミンサガはシナリオよりバトルの方がよっぽど劇的なストーリーしてるんじゃないかという気さえしてくる今日この頃。
さらに言うと、エルマンて実は書きようによっちゃ怖くも妖艶にも見せられるキャラなんじゃないかとマジで思う今日この頃。あの出っ歯で8割がた台無しになるのは否めませんが。


以下、言い訳という名のQA集。


Q.ジュエビに丸のみとかかみ砕くとかの攻撃は存在するのですか?
A.勿論捏造ですので、これから挑戦される方はその点はご安心ください。
むしろあってくれた方が良かったと思うような攻撃が盛りだくさんですが!!

Q.確か黒ジャミル周あたりの話では、ジュエビが覚醒した後も逃げてたような描写がありましたが、今回逃げられないとか言ってるのは何故ですか?
A.ここまで長く書いてると、随分前に何も考えずに書いた描写と矛盾点が相当出て来てますがキニシナイ(゚ε゚)
狂戦士の薬の設定もエルマンの石頭も勿論捏造ですがキニシナイ(゚ε゚)(゚ε゚)〜♪♪

Q.エルマンは確かフィールドアーマー装備だったはずですが、鎧は溶かされなかったんですか?
A.画面上で姿が変わらない限り、あのテの鎧はそーいう名前の術だと脳内変換しております。だってあまりにもロマンがなかろう最終的に全員同じ鎧姿って。特に姐さんの鎧姿とかやっぱりイヤだし。リアル指向の作品ならともかくミンサガはロマン優先ということで。

Q.古刀の出番は・・・
A.上記SSでは書くの完全に忘れてましたが、実プレイでは確かジャミルに装備させて雪だるま時に余裕があれば攻撃させてたかと。

Q.LPが高い男性キャラはナニがどうのというのは・・・
A.答えは河津神のみぞ知る。

Q.今回無駄に触手描写がありますがそれは
A.触手が嫌いなオタなんていません。(真顔)

 

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