ジュエルビースト戦inホーク編

 

ほぼ実話プレイ日記SS風第6弾。
今度はキャプテン・ホークがジュエルビーストに挑むの巻。
毎度のことで申し訳ありませんが、くれぐれもジュエビ攻略の参考にはなさらぬようご注意願いますorz

 

 

平和そのものなウエストエンドパブ。
バーバラの踊りがひと段落したところで、いつも通り小金の計算をしていたエルマンの前に──
全身から怒りのオーラと海と汗の臭いをプンプン発し、服の右半分がやたらボロボロという奇妙奇天烈ないでたちの男が現れた。
「やっと会えたなこん畜生め。さぁ〜て早速一緒に来てもらうぜぇ!!!」
パキポキ指を鳴らしながら男はエルマンに近づくが早いか、むんずと胸倉を掴む。当然エルマンは・・・
「なななな何なんです貴方!? いいいい痛い痛い痛い離してくださいよ! 訴えますよ!!」
「おうおうこの大海賊キャプテンホーク様を訴えられるもんなら訴えてみろコノヤロー!!
こちとらてめぇを連れてジュエルビーストを叩き殺す為になぁ、
サンゴ海を悠々と駆け回りも出来ず!
商船もモンスターも徹底的に無視!
挙句の果てにはブッチャーの野郎にとっとと降参させられて腰ぎんちゃくみてぇな真似までさせられて!!
おまけに追ってくる海賊どもを全員ぶっ飛ばして蹴散らしたかったってのにそれすら出来ずひたすら逃げ回らされ!
 全部てめぇのせいだこの妖怪糸目小僧が!!」
「こここっちの知ったこっちゃないでしょ!? 姐さんってば、お願いですから助けてくださいよぉ〜!!」
「どうも最近エルマンを連れに来る奴らが凶暴になってきてるねぇ。とりあえずいつも通り地図とアメジストはあげるわ、今回も頑張ってね♪」
「いやちょっと姐さん傍観はやめてくださいよ!! な、ナタリーも何とか言ってくださいぃい!!」
「エルマン、いい加減もう諦めよう。もう運命だよこのパターン、このメモカでは
「あのねぇナタリー、せっかくメタネタが前回でマジネタになったんですからもうメタネタは・・・うぎゃああ!!」
言っている間にもエルマンはそのまま首根っこを掴まれズルズル引きずられていく。「まずは金の算段だ! レイディラック復活のため、お前にはトコトン役に立ってもらうぜ!!」



「エルマンさん、大変申し訳ありませんでした。キャプテンは只今非常に気が立っておりまして・・・どうか事情を察していただけませんか。この件は穏便に」
「いやいや、ゲラハさんが一緒で助かりましたよ・・・アイテテ」ノースポイントの宿屋で、ホークに殴られた頬をゲッコ族の青年・ゲラハに治療してもらいつつ、エルマンは部屋を見渡す。「それにしても、これまた華に欠けるパーティですねぇ」
「そりゃこっちの台詞だエルマン! 何故かほぼ毎回一緒にされる俺の身にもなってみろ!!」ベッドの上からジャミルが飛び降り、エルマンに突っかかる。部屋の隅ではダークがまたしてもブツブツと何事かを呟きつつ体育座りをしていた。
「安心しろ。華ならジュエルビーストをぶっ潰してから丁重にお迎えするぜ、この7つの海で最高の華をな!!」一同を見回したホークが鼻高々に言ってのける。
「そんなツテがあるなら今すぐお迎えしてくださいよ!! いつも以上に地味っていうか悪人度極まるパーティなんですけど!」
「自分を棚に上げてよく言うぜ。とりあえず、そんなこたぁどうでもいい・・・
こいつを見てくれ」
ホークは胸元からボロボロの紙っぺらのようなものを取り出すと、エルマンに押しつけた。「へ? こいつは古文書ですね・・・そういえば毎回気になっていました。これを、一体どこで入手したんです?」
「ウェイプでゲッコ族を助けた時に礼としていただいたんだよ」
「いえ、違います。キャプテン、嘘はいけません」
「おいゲラハ、そこは黙ってろよ・・・とりあえず、ジャングルに隠された財宝の秘密が分かるっていう古文書なんだが、内容がチンプンカンプンでな。まずはこいつを解読して当面の資金を工面しようと思ってな」 「そうそう、これ解読できれば結構簡単にジュエルも手に入りますしね! いつも重宝させていただいてたんですよ」
「そんで大抵古文書せしめたらキャプテンには裸になってお帰りいただくと。いつものコースだよな・・・って、ゲフン」「ジャミル何か言ったか?」「いやいやめっそうもございませんよキャプテン!」
ジャミルがおどけるのを横に、エルマンは渡されたボロの紙きれをしげしげと眺める。
「とりあえず、古文書はメルビルに行けば解読は出来ますね。ただ・・・あの、何か非常にイヤーな予感がするんですが。
ゲラハさん、こいつの入手方法を詳しく教えてもらえます?」
「実はその・・・」珍しくどもりながらも、ゲッコの青年は語りだす。「ゲッコ族の村にこの古文書を持っている者がおりまして。
村の人間が助けられた後、たまたま彼の話を聞いたのです。そうしたら、古文書を買わないかと」
「・・・・・・幾らで?」
「・・・・・・・・・1万金です」
「・・・・・・・・・・・・!!!」(ブチ
エルマンの小さい背中から、一気にどす黒いオーラが部屋中に放散される。「やべぇ! ホーク、逃げろ!!」「って、一体何なんだこのどす黒い覇気は!? こんな殺気は海賊どもどころかあのブッチャーでさえ・・・」「うう・・・何故だ、あ、頭が・・・俺の記憶が・・・この妖気・・・アサシンか?」「おいダークしっかりしろ、泡吹いてんじゃねぇ!」
ただ一人、その時のエルマンと正面から向かい合っていたゲラハは冷静だった。「エルマンさん、あの、睨まないでください・・・目が血走ってますよ」
「ゲラハさん。貴方がついていながら、何故そのようなことに? これね、人の世では詐欺って言うんですよ」いつもより数段落ち着きはらったエルマンの静かな声が部屋に響く・・・・・・
「申し訳ありません。私も止めたのですが、村の財政状況を鑑みるとそれも致し方ないかと」
「ほほぅ。その為にホークさんの財政状況がどうなっても構わんと」
「いえ、あの・・・」「とりあえず、帳簿を見せていただけます? ジュエルビースト退治の為には資金のやりくりが不可欠でしてね」
ゲッコの青年はエルマンの発する無音の凄まじき気迫に耐えきれなかったのか、黙って帳簿を取り出しエルマンに渡す。そして。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」(ブチブチブチブチブルブルブルブル
「ま、間違いない、これは間違いなくアサシンの、祖父の、あの恐ろしい闘気・・・っ!!!」「だからダーク落ち着け、とりあえずそのダガーしまえ!!」「こ、こいつはブッチャーも帝国兵どもも裸足で逃げ出すぞ・・・(コソコソ」「つーかホーク逃げんな、俺を置いていくなあぁあああ!!」「最初に逃げろっつったのはお前だぁああ!!(脱兎」
そしてエルマンは帳簿を閉じると静かに立ち上がる。その右手にはいつの間にやらろばの骨が握られていた。「このような財政状況で──よくもまぁ堂々とジュエルビースト退治とかレイディラック復活とか言い張って人を拉致出来たものですね・・・・・・
絶対に許しませんよ悪党ども!! 一人たりとも逃しませんッ覚悟おぉおおおおお!!!!!



それから数日──所はバルハラント。
「エルマンさん、やはりここでモンスターとの交渉をしなければいけないのでしょうか」毛皮を3枚ほど被りながらゲラハが尋ねる。
「あったり前です! あれっぽっちの資金じゃジュエビ討伐どころか当面の宿屋にすら困るじゃないですか!!
ここはガトの村でソックスも安く手に入りますし、絶好の交渉ポイントなんですよ。詳しくは前周を参照です」
山のような商売道具を軽々と背負いながらエルマンはゲラハを連れてとっとと雪原を歩いていく。その後ろから、哀れな賊ども3人が付きしたがっていた。「あ〜畜生、未だに夢に見るぞ・・・血走った白目のド真ん中にあのトカゲの卵みてぇな黒目・・・しかも土竜撃つきだ。妖怪二つ目小僧たぁよく言ったもんだ」「つーかさ、イスマスでキットンソックスもゲットして、スカーブ山でタイニィフェザーの羽根ゲットして、リガウ島で恐竜の卵まで取ったってのにまだ金が要るのかよ」
ジャミルがそう言った瞬間、またしてもエルマンの背中から妖気が放散される。「あのねぇ兄さん・・・ジュエルビースト退治にはいくらお金があっても多すぎるってこたぁないんですよ。毎回のように付き合ってるんですからお分かりでしょ?」
「いや、だからろば骨構えるのやめろって! いつにも増して暴力的だぞ今回のお前」
「文句でしたらホークさんに言っていただけます? 全く、金もないのに何故フィールドアーマーなんぞ買い込んだのやら」
「な、何だってぇ!?」ジャミルは思わずホークを睨む。元海賊は決まり悪げに頭をかいた。「いや、何だ、その・・・俺が重装兵になって装備を固めれば、柱戦でもジュエビ戦でも耐えられるかと思ってよ。そうなりゃ、高価な術や武器なんぞ買わんで済むだろ?」
「一理ありますが、それであればどうせならドミナントグラブとレッグメイルとスマートヘルムのセットを揃えていただかないと。フィールドアーマーだけでは中途半端ですよ」
エルマンは言いながら、懐から山のような薬草を取り出した。「というわけでゲラハさん、早速ですが薬草摘みの貴方にこの薬草の種類を・・・って、アレ?」
見ると、ゲラハはエルマンの後方から少し離れた場所で寒さに縮こまっている。「だ、大丈夫ですかい?!」
「申し訳ありません。ゲッコ族は寒さが苦手で」
「こんな雪国、ゲラハにとっちゃ死ねって言ってるようなもんだぞ。とりあえずガトの村で生命の炎を・・・」
「そんなことしたらまたお金がかかってしまいますし、第一そこまでゲラハさんの体力もちませんよ! こうなったら・・・とりあえず、この赤い草と黄色い草を使って・・・そこの洞窟で一休みしましょ」



「助かりました。薬草で即席のスープを作り身体を温めるとは、勉強になります」
「いやぁ、ゲラハさんが保存しておいて下さった干し肉と芋があってこちらも助かりましたよ。おかげさまで腹もふくれましたしね」
洞窟内で火を起こし、エルマン特製の薬草スープでゲラハを回復させた後──
一行はひと休みしつつ、作戦の練り直しに入った。「しかしこうなると、これ以上雪原で交渉を続けるわけにもいきませんねぇ」
「モンスターがくれるブツも今の所、大したモンもないしなぁ・・・」
「フィールドアーマーも最後まで役に立つ防具ではありますから、今売っぱらっちまったら大損ですしね。ねぇ、カッパさん」
「わ、悪かったよ・・・白目剥いて睨むのやめろ、コノヤロー」
ホークは暫く考え、そして言った。「ジュエビ退治に必要な武器はフランシスカ・・・それも最低3本。そうだな?」
「そうですね、このサイトによれば。ロペラも必要ですし、勿論オーヴァドライブ用の術法も必要ですよ」
「今回フランシスカは3本じゃなく1本で行く」「って、えぇ!? もしかして石斧でやるつもりですかい!?」
「違う。まずはお前のろば骨があるだろうが」
「あのねホークさん、こりゃあくまで対人用護身用のまがい物であって、魔物に対する殺傷能力はゼロですぜ?」
「何だそりゃぁ!? 俺ら相手にあれだけのダメージ叩き出しておいて、魔物相手にゃできねぇだと!?」
「だからそういう武器なんですよコレ。クジャラートあたりじゃ、街中のほうがおかしな方々が多いもんでね。そうでしょ、ジャミル兄さん」
「否定はしないが、改めて言われるとムカつくぜ・・・」
「ち・・・じゃあ仕方ねぇ。リガウ島の財宝の穴でゲットしたボロい刀があったろ」
「あの古刀か? ジェルトンの鍛冶屋によりゃ、鍛え抜けばすごい刀になるとか言ってたけどな」
「それをちびっとでも鍛えて使い物になるようにする。それでフランシスカの代用にはなるだろ・・・あとはスカーブ山に登ってろば骨の本物を取ってくるか、もしくは砂漠にロペラ級の細剣があるっていう話だからそいつをゲットだ」
「大地の剣のことか? まぁそれで何とか代用になるか」
「というか皆さん、その前に・・・」エルマンはこれだから素人はと言わんばかりに首を振る。「柱壊しがあるでしょ。アレにはどうしたって火の鳥最低3人分は必要ですよ。できれば合成したほうがいいですからサイコブラストの分も。前周までの色々を考える限り、ジャミル兄さんの大地の剣経由クラックやらクイックチェッカーやらスウィングやらには期待しない方がよさそうですし」
「否定はしないが、とてつもなくムカつくその言い方やめろ! なんならお前がやってみるか、素早さドンケツのお前じゃ動くことすらできねぇだろが!!」
「私は私で最前列で壁になる仕事がありますので。今回もやっぱりまたまた城塞騎士(既にレベル5)ですしね」
「いや・・・」鼻を鳴らすエルマンを、ホークが止めた。「エルマン。お前は他の3人と同じく、火の鳥or聖杯役だ」
「へ? そ、そりゃ後列に下げていただけるのは非常にありがたいお話ですが、それじゃどなたが壁になるんですかい?」
「勿論、この俺がやる」ホークは堂々と胸元を親指でつつきながら得意げに言い放った。「城塞騎士とはいえ、一発喰らえば終わりだろ。その点重装兵なら何回か攻撃喰らっても耐え切れる可能性がある! 幸いフィールドアーマーはあるし、壁役にはもってこいだろう!」
「さっすがキャプテン! やっぱ、いざって時は頼りになるなぁ!」
「というわけで他の皆は火の鳥と聖杯を頼むぜ。これで柱なんぞ楽勝だ!」
「何か色々と不吉なフラグ立ってますけど、大丈夫ですかねぇ・・・」



エルマンの心配は大当たりで。
意気揚々とジュエルビーストの御柱に到達したキャプテンホーク一行は、見事に20戦全戦全敗してウエストエンドに逃げ帰ってきた。
「やはり重装兵といえど、あの猛攻を耐え切るのは無理ですキャプテン。他に装備を整えているならまだしも、フィールドアーマーだけでは」
「今回ラミアも結構デレまくってくれているんですがね。開幕がブラッククラウドでしのげても後の腐竜の攻撃を防ぎきれないのは問題ですねぇ」
お互いに傷の手当てと服の修繕をしつつ、ゲラハとエルマンが口々にぶつくさ呟く。「えぇ〜いうるさいうるさい! ちょっと運が悪かっただけだ、あと20戦すりゃ何とかなるぁ!!」
部屋の隅ではホークが見事に悪酔いしながらテーブルに拳を叩きつける。ジャミルが突っ込んだ。「まさかローザリア重装兵様ともあろうものが、腐竜の攻撃2発で撃沈確実とはね。ヘタしたら1発で終わるし、連携されたら勿論終わるし、あとの俺たちどうしろってんだよ」
「つーかお前らも少しは耐えてみろ! 男だろ!! 腐食ガスやら蹂躙やらかちあげやらがやっと終わったと思ったら全員ぶっ倒れてるか動けなくなってターンまで終わってるたぁどういうことだぁ!!」
「男かどうかの問題ではありません、キャプテン」
「関係ないですけど、画面上で腐竜が大きすぎて自分らがどういう状態になってるかすらよく分からん時があるってのもムカつきますよね」
片側の膨らみが破れた帽子をチクチク直しつつ、エルマンが少しだけその糸目を開いてホークを睨みつけた。「これであればいっそ、全員合成火の鳥or聖杯係にした方がまだマシかも知れませんが、もうそのお金もないですしね。どこかのカッパさんのおかげで」
「てめぇその出っ歯折られたいのかエルマン!? 畜生、帽子脱いだら坊主頭を半年間伸ばしっぱなしにしましたみたいなつまんねぇボサボサ頭しやがって。芸人の端くれならアフロかオカッパにでもしやがれってんでぃ」
「私の髪型のこたぁ何も関係ないでしょ!? 手入れもあまり必要ないですしこれが一番合理的なんです、第一ホークさん! 貴方みたいな奇妙奇天烈ファッションな方に容姿をとやかく言われたかありませんよ!! 身体の右側がほぼ全裸でしかも三つ編みヒゲて!!」
「こっこいつは海賊の頭領たる証だ!! これだきゃ絶対に譲れねぇんだよっ」
「・・・しかも恐らくその三つ編みも服も、洗っていない・・・臭う」ダークが部屋の隅に座りながら呟く。ベッドに飛び乗りつつジャミルが悪乗りした。「そうそうそーだよなー、俺もずっと思ってたんだ! 俺たちだからいいとしても、これが例えばさ、あのイスマス城にいたお坊ちゃんが仲間に入ってたらどうなってたよ? オッサンの臭いだけでアイツぶっ倒れるぞ」
「こりゃ海の男の臭いだ! 誰にも文句は言わせない、なぁゲラハ!!」「・・・ですからキャプテン、私は何度も忠告させていただきました。海で身体を洗い風呂がわりと言い張るのはやめてくださいと」
「あぁもう・・・とにかく、話戻しましょ」エルマンは帽子をかぶり直すと、改めてホークに向き直った。「ホントはやりたかないですが、やっぱり前周と同じ作戦で行きましょう」
「前周? ってお前、まさか・・・」今度はジャミルが目を見開いてしまう。腹を決めたようにエルマンは腕を組んだ。「城塞騎士として、私が最前列にでましょ。皆さんは全員後列で合成火の鳥or聖杯です。そのかわり、ムーンストーンとダイアモンドとアメジストは全部私にくださいよ!」
「お、お前・・・マジかよ、自分からそれを・・・」前周の彼の慌てふためきぶりを知っているジャミルは呆然だ。
「馬鹿野郎。んな真似してどうなる? 何が変わるってんだ」
「いえキャプテン、エルマンさんの作戦が最も現実的かと思われます。城塞騎士のディフレクトが決まれば物理攻撃のダメージは0ですし、今のエルマンさんのレベルであれば我々を守っていただける確率も高い」
「・・・それに、最前列で一人残れば腐竜の連携攻撃を一手に引き受けられる。後列への被害も少なくなる可能性がある・・・」
「多分100%エルマンはぶっ倒れるだろうが、エルマンに運命石集中させといてラミアだけが残った時に誰かがエルマンを起こせさえすりゃ、ほぼ勝利確定だぞ!!」
ゲラハもダークもジャミルも口を揃える。だが、ホークは首を縦に振ろうとはしなかった。「駄目だ。絶対に駄目だ」
「は? いやちょっとホークさん、変な意地張らんで下さいよ!」
「てめぇなんぞにそんな役押しつけてみろ! 後からどんだけ請求するつもりだゴラァ!!」
「確かにちょっとぐらいはサービス料を頂くつもりですけど、今はそういう話じゃないでしょ!! とにかく柱を落すことが最優先で・・・って、アレ?」
ふとエルマンは、扉をちょっとだけ開いてじっとこちらを見つめている少女に気づいた。「ご、ごめんねエルマン。凄い勢いの怒鳴り声が聞こえたから、みんなが心配で・・・」
「ナタリー! やっぱりここにいたんですね、良かった。姐さんは?」
「さっきまで一緒にここでみんなの話聞いてたよ。呆れて出てっちゃった」
「いや、お恥ずかしい・・・ナタリーにも姐さんにも聞かれちまったんですねぇ」
そんなエルマンとナタリーの横を、酒の臭いをプンプンさせたホークがドカドカ通り抜けていく。「ちょっとション・・・じゃねぇ、花摘みに行ってくらぁ。てめぇらはさっさと寝てろ」
扉が乱暴に閉じられた後、呆れたジャミルが声を上げる。「全く、あれでもキャプテンだったってんだから恐れ入るぜ。頭の固いオッサンはコレだから」
「今はお金の話をしている時ではないのですが。私のいつもの言動からして、そう思われても仕方ありませんかねぇ」
「いえ、皆さん。恐らくキャプテンは・・・」



「やっぱりここにいたんだね・・・って、アンタかい? キャプテン」
「何でぇ。誰がいると思ってやがった」
ウエストエンドパブの裏の川べりで。酔いをさましていたキャプテン・ホークは、踊り子バーバラに声をかけられていた。
「やれやれ。あそこでエルマンがダダこねて飛び出すってのがいつものパターンだったんだけど、今度はアンタか。
さすがにエルマンもちょっとは成長したんだねぇ。自分からあの作戦を言い出すとは」
ホークは川を眺めながら腕組みし、黙っている。バーバラはなおも畳みかけた。「ねぇキャプテン。気持ちは分かるよ・・・
私だってエルマンが何度も何度もぶっ飛ばされるところ、見たくはないし」
「あいつにんな事させたら、いくら吹っかけられるか知れねぇしな」
「イヤだね、アンタも分かってるんだろう? この状況でエルマンが空気読めずに金の請求なんかするはずないってことぐらい」
「・・・・・・」
「キャプテンにしてみたら、仲間や部下をそんな危険な目に遭わすわけにはいかないからね。自分が壁になろうと勇みたいのは分かる。私なんかはさっさと割り切っちゃったけど、キャプテンはそうはいかないみたいねぇ」
「・・・・・・へ。お前さんにゃ、かなわねぇな」ホークは諦めたようにため息をつき、苦笑を漏らした。
「はい、もうお酒はダメよ」バーバラはそっとしなやかに指をホークの剛腕に回すと、その手からするりと酒瓶を取り上げる。「でもね、部下の気持ちも分かってあげとくれよ。キャプテンを守りたいっていうエルマンの気持ち」
「あいつが? んな馬鹿な、俺ぁいつも偽ろば骨で殴られてばっかだぜ」
「分かってないねぇ。あんたはアイツの母性本能を目覚めさせちまったんだよ」
「はぁ? あいつは男だぞ、気味悪いこと言ってんなよ」
「母性本能というかオカン体質というか・・・・・・普段はヘタレだけど、自分がやらないとどうしようもないって時にはどうにかして踏ん張ろうとするんだよね、あいつは。多分、アンタたちの帳簿見た瞬間に目覚めちゃったんじゃないかな」
「まぁ確かに、今の俺はどうしようもない陸のカッパだしな。海なら無敵だが、陸のことは何も分かりゃしねぇ・・・特に金のことになるとさっぱりだ。そういやゲラハも、似たような感じで俺にくっついてきてくれてるよ」
「とんだ悪い男だねぇ、アンタもさ」バーバラは笑いながらホークの足元に座る。だがホークは川をじっと眺めて突っ立ったままだ。
「バーバラよぅ。この前お前さんが言ってたこと、アレは本当なのか」
「私たちがずっと時間の牢獄に閉じ込められてるって話?」
「俺は幸か不幸かあんまり巻き込まれちゃいねぇみたいで大した記憶もないが、エルマンとかお前さんは違うんだろ? 何度も何度もウエストエンドを脅かされて、そのたびにジュエビを封印してはまた元の木阿弥・・・
いやちょっと待てよ? つーことは俺も、何度も何度もブッチャーにハメられてレイディラックを壊されてるってわけか」
「真サルーインを倒した時には、もしかしたらと思ったんだけどねぇ。どうやらまた元に戻っちまったみたいで・・・」
「それに関しちゃ、俺に考えがある」「え? もしかして何か打開策でもあるのかい」
「正解かどうかは分からねぇが・・・ま、そいつはジュエビを倒してからのお楽しみだ。
まずは目の前の柱をぶち壊さねぇとな! とにかくあの糸目の城塞騎士様に頭下げてくるぜ」
笑いながらその場を去るホークを、バーバラは苦笑しつつも見送った。



というわけで。
「う・・・うぎゃあああああああ〜〜〜!!!!」
ジュエルビースト御柱の洞窟にて。腐竜のかちあげ連携攻撃を気持ちいいほど喰らい、エルマンの小さな身体がくるくる回ってボールのように天井高く吹っ飛ばされる。絶叫と共に。
「今だ! この火の鳥を喰らえ!!」ホークのかけ声と共に、腐竜の隙を狙い火の鳥が3体現れ、同時にゲラハの手で聖杯が輝く。
──だがそれでもまだ、猛烈な炎と光が消え去った後には腐竜が2体、そしてラミアが残されていた。「ちっくしょう、前からこいつらこんなに強かったか!? 前は火の鳥2発と聖杯で何とかなってたはずなのに・・・」
「怯むなジャミル、もう一度火の鳥だ! ゲラハは聖杯!!」
ホークの怒声でジャミルたちは再び火の鳥の詠唱に入る。だが次の瞬間に腐竜が再び猛り狂い、蹂躙によりゲラハとダークが吹っ飛んだ。ラミアのペインにより、ホークもまた倒れる。
「こん畜生め! 行くぞ!」もはやボロボロのジャミルだったが、それでも力を振り絞り火の鳥を発動させた──そして遂に腐竜どもは燃えカスとなり、残るはラミア一人。
「エルマン、頼む!」ジャミルは渾身の癒しの水でエルマンの回復を行なう。悲しいかな彼のステータスでは回復具合は今一つだったが、それでもエルマンを再び起き上がらせるだけの力はあった。「よっこいしょ・・・っていうか兄さん、回復量が未だに100行くか行かんかって、愛がないにもホドがあるでしょ」
「文句言うんじゃねぇ、お前が起き上がりさえすりゃもう勝ったも同然・・・うぎゃあっ!?」「にに兄さん!?」ジャミルに向かって無情なペインが飛んできて、あっけなくジャミルも倒れる。
これでもう完全に、エルマンとラミアは男と女のタイマン勝負となってしまった。「っていうかね皆さん・・・
貧弱すぎっス!!! これまで3本倒して3本ともこのパターンってどういうことですかい!!!??」
「るっせぇ、てめぇはそのまま十字斬りだけしてろ・・・間違っても俺らを回復させようなんて考えるなよ」
倒れ伏しながらホークは指示を続ける。運命石を集中させたおかげでラミアの魔術と闇術と邪術は防げているが──
「もしナイトメアが来たら今、防ぐ手段はない。お前が混乱して自分に火の鳥を撃つ危険はまだあるんだ、油断するな・・・グフっ」
「いやだからダークさん、そーいう怖いことを言わんで下さい!! ああもうこん畜生!!!」
言いながらもエルマンはラミアのペインとエナジースティールとショックウェイブの嵐に耐え続ける。耐え続けつつ十字斬りを連発し──
10分近くもの激闘の後、ついにラミアは吐息を残し、昇天した。



「おいもう許せよ、4本目ぶっ壊した時は何とかお前以外の奴らも立ってたんだからよ」
「・・・・・・」
何とかかんとか柱を全て破壊し、その奥の石化獣軍団も撃破し、ジュエルビーストへの道を切り開いたホークたちだったが。
最後はズタボロのボロになり、歩く力もなくなったエルマンはゲラハにおぶわれ、ウエストエンドへの帰途についていた。既にとっぷりと日は暮れている。
「・・・・・・服の修繕費とクリーニング代と傷薬代、それから慰謝料は頂きますよ」
「おうおう、減らず口だけは健在で安心したぜ。全く、自分から言い出した癖によぉ」「とりあえず今度は御本尊だ、資金調達は頼むぜエルマン!!」
ホークとジャミルの声を聞いて、ようやくエルマンは泥だらけの顔を上げる。「最低でも、3人分のオーヴァドライブとシムラクラム一人分は必要ですからねぇ。また雪原で頑張らせていただきますよ」
「雪原・・・ですか」「あ、ゲラハさん大丈夫です! 心配しなくても貴方には生命の炎をご用意させていただきますんで」
「じゃあ、俺たちゃとっととウエストエンドに帰ってバーバラに報告しとくぜ! 今日は祝勝会だぁ!!」「ナタリーも城塞騎士様を待ってるからな! 急げよ〜」「あ、ちょっとぉ!!」
ホークとジャミルは言うが早いか、とっとと走り去ってしまう。ダークも何も言わずにさっさとその後を追った──
後に残されたのは、糸目の会計係とそれを背負うゲッコの青年。
「全く、金もないのに柱落しだけで祝勝会とは、ホークさんも何を考えておられるやら。ゲラハさんもよく付き合っておられますねぇ」
「私にとってのキャプテンは、恐らくエルマンさん──貴方にとってのバーバラさんと同じようなものですから」
「まぁ・・・・・・そうなんでしょうねぇ。姐さんもあぁ見えて抜けてるところも多いですし」
「ところで・・・」ゲラハはエルマンの傷の具合を気遣いつつ呟いた。「大変申し訳ありません。今回のジュエルビースト封印──私は抜けさせていただきます」
「なっ!?」ゲラハの背中でついウトウトしかけていたエルマンは、いきなりの発言に思わずまた目を剥いてしまった。「いいい一体どしてです!? 何があったんスかゲラハさん!?」
「具体的には、私のBPの件です。
既に皆さん、斧技のフライバイとかかと切りを習得し、オーヴァドライブが可能になっていますが」
「そうですよ。ゲラハさんだって同じでしょ?」
「確かに私もオーヴァドライブは可能です。が──
オーヴァドライブをしても、フライバイをやるだけのBPが残らないのです。恥ずかしながら、それに気づいたのはオーヴァドライブ習得後でした」
「そ、それは確かに困りますけど・・・だからって貴方に抜けられるのはもっと困るでしょ!!」
「もうこれ以上、貴方がたの負担を増やすわけにはいきません。特にエルマンさん、貴方の身体にこれ以上負担はかけられない。それはキャプテンも同じ気持ちのはずです」
「あのねぇゲラハさん・・・ホークさんにはそのことは?」
「まだ話していません。
お金でしたら、私の装備を全て売っていただいて構いません。勿論雪原で薬草で稼がせていただきますので、少しは後に入る方の足しになるかと。お詫びは必ずお支払いいたしますので」
「そういうこと言ってるんじゃないんですよ!!」エルマンはいきなりゲラハの頭をポコポコ叩き出す。「全く皆さん私を誤解して! 金を出すと言えば私が何でも許すとでも思ってるんですかい!?」
「え、エルマンさん落ち着いてください。痛いです」
「BPがないのは確かに困りますが、それならそれでやりようがあります!!」エルマンはゲラハの背中からぴょんと飛び降りると、懐から細剣を一本取り出して見せた。「例えばホラ、この大地の剣があるでしょ!!
こりゃロペラに次ぐ攻撃力ですから、BPがなくとも衝突剣とかすみ二段を組み合わせりゃなんとか行けますよ」
「なるほど・・・」
「ただその場合、ゲラハさんのLPが犠牲になりますから・・・出来ればもうちょっと効率的な方法を考えた方がよいですけどね。
ですが、ここまで来て抜けるのは最悪に大損の選択肢ですよ! ・・・って、アイテテテ」
「あぁ、動いてはいけません。傷口が開いてしまいます」痛みで座り込んだエルマンの脚の様子を見ながら、ゲラハは傷薬を取り出す。「LPを消費する程度でしたら問題ありません。それでキャプテンや皆さんのお役に立てるのでしたら何よりですが」
丁寧に脚を診るゲラハを眺めながら、エルマンは今度は笑い出した。「いやぁ、私もちょっと前まではフランシスカが複数なけりゃ、BPがなけりゃもう終わりだとか考えてたもんですし、実際そうでした。強い技や交渉術を覚えられるような知識もろくにありませんでしたし。
でも、結構何度もこういうこと繰り返して──分かってきたんです。知恵を振り絞れば、色々と何とかなるってこと。雪原での交渉もそうです」
「何度も・・・ということは、バーバラさんの仰ったことは本当だったのですね。道理で私にもかすかに記憶があるはずです」
「何の因果でこうなってるかは知りませんけどね。私しゃそれも人の知恵で何とかなると思ってますよ」
「人の知恵、ですか。やはり人の間にいるのは勉強になります・・・
ですが、エルマンさん。キャプテンの心持が私は不安なのです」
「ホークさんの?」
「貴方がこうして傷ついたことで、恐らく最も後悔しているのはキャプテンです」
「えぇ!? んなバカな、とてもそうは見えませんでしたが・・・」
「いえ、私には分かります。キャプテンは、部下が傷つくぐらいなら自分が盾になる、そのような方です。
私がいることで貴方やジャミルさん、ダークさんに負担がかかり、今後も同じようなことが続くのであれば・・・キャプテンは誰かが犠牲になる前にご自分の命を散らしてしまうでしょう」
「ゲラハさん・・・そりゃ、違いますよ」
エルマンは少し口ごもると、脚を押さえているゲラハの手を取った。灰色の鱗で固く覆われたゲッコ族の手は夜の気温のせいで冷え切っていたが、それでも。「いつだったか、私もね。今のゲラハさんと同じように、BPが伸びなくて・・・ジュエビ戦から抜けさせていただこうと思ったことがあるんです。けど、その時助けていただいたのがホークさんとジャミル兄さんといったお仲間でした」
「キャプテンが?」
「ジュエビを封印する前にメルビルの襲撃事件が起こっちまうほど、ヤバい状態ではあったんですがね。
色々と皆さんに励まされて、その時はホントに何とかなっちまったんです。結局こうして元の木阿弥になってますけど・・・
当時の私は今のゲラハさんよりよっぽどお荷物でしたけど、それでもホークさんも兄さんも私を手放しはしなかった。
ここまで育てたのにもったいないってのも勿論あるでしょうが、多分・・・」
「多分?」
そこまで言ったところで、エルマンは少しだけ顔を赤らめて首を振った。「いや、やめときましょ。野暮です。ですけどね・・・
貴方が今抜けることは、ホークさんは一番嫌がると思うんですよ。何より絶対許してくれませんよ!」
「ですから、キャプテンにはこの話はしていなかったのですが。黙って今晩、宿屋から去るつもりです」
「そんな!!」エルマンは思わず両手でゲラハの腕を掴む。あまりに強く握りしめたせいか、すり傷だらけの手の甲に血が滲んだ。「あのね、ゲラハさん・・・
これ、実は姐さんにも兄さんにも誰にも言ってないし、金輪際言わないでいただきたいんですが」
「?」
「私しゃ人一倍臆病ですし、戦闘は苦手ですし、城塞騎士も武芸家もマジでイヤです。ウコムの鉾でオーヴァドライブしろなんて言われた時は冗談じゃないと思いましたし、ジュエビもシェラハ様も四天王もデス様も、勿論真サルーインだってイヤです。
でも、一番イヤなのは・・・何も出来ずに、一人で死ぬことなんですよ」
「・・・エルマンさん? まさか、貴方・・・ジュエルビーストに殺された記憶が!?」
ゲッコの青年の黄色い瞳に、珍しく動揺が走る。エルマンはこくりと小さく頷いた──「姐さんが詩人さんを追いかけて、ナタリーまで連れてふらっと出ていっちまってから・・・ウエストエンドのパブでちまちま商売しつつ、私待ってたんですよ。姐さんを。
そしたらある日、地鳴りかと思うほどの轟音がパブの外から聞こえてきたんです。慌てて外へ飛び出したら──」
ガタガタ震えだしたその両手が、その時の恐怖を雄弁に物語る。「エルマンさん、もう結構です。無理に話すことはありません」
「・・・・・・何にも。ホントに、何にも出来ませんでした。
誰からも声をかけられず、何も出来ず、そのまま、何もかもが終わりました」
ゲラハの手に雫が数滴、落ちる。ともすれば夜の闇に消えてしまいそうな震え声が、響いた。「だから、なんです。よい商売の地を守りたいってのもそりゃありますけど、何だかんだ言って私・・・一人はイヤなんです。一人で死ぬのが、一番イヤなんです」
言いながらエルマンは顔を上げる。満面の笑顔ではあったが、その糸目の周りは涙で真っ赤に腫れ上がっていた。「だから・・・だから。お願いっス、ゲラハさん。
あんまり寂しいこと、言わんでくださいよ」





「ではキャプテン。私は一足先に馬の準備をしてきます」
翌朝──ウエストエンドの宿屋からゲラハは出ていった。資金調達のため、再び雪原へ向かうために。
その様子を見送りながら、ホークはやれやれとばかりに胸をなで下ろす。「あいつも人知れず悩んでいたみたいだが、どうやら解決したみたいだな。いつの間にやら!」
「あれ、オッサンもそう思ってた? 俺もちょっとだけ心配だったんだが、もう大丈夫みたいで安心したぜ。ホントに何とかしちまったみたいだな、いつの間にか!」
わざと大声で話すホークとジャミル。そんな彼らを、山のような荷物を引きずるようにしてようやく部屋から出てきたエルマンがどやしつけた。ゲラハの介抱のおかげか、怪我はすっかり治っている。「皆さん、時は金なりですよ! 余計なお喋りしてないで、さっさとお金ためて帰ってきましょ!!」
そんなエルマンをニヤニヤと眺めつつ、ホークは言う。「そーだな。一人ぼっちは寂しいもんな、エルマン!」
「へ?」
「全く、お前もそんなツラしてツンデレキャラなんざ似合わねぇっての。寂しいなら寂しいって言っていいんだぜ?」
「ほえ? に、兄さん?」
唖然となるエルマンの背中を、そっとバーバラが抱きしめる。「エルマン、ごめんね。薄々気づいてはいたんだけどねぇ・・・二度とあんたを一人で死なせはしないよ」
ナタリーがトコトコと彼の横にやってきて、バーバラに負けじと囁いた。「もしホントにどーしようもなくなっても、最後は必ず私がそばにいるからね! 自分は一人だなんて言っちゃヤダよ?」
「・・・皆さん? ひょっとして、まさか・・・あの時の、全部聞かれて?」エルマンの顔が一気にタコのように真っ赤になる。「ち、ち、ち、違いますよ!? 私しゃただ、今ゲラハさんに抜けられたら大損だと思いまして・・・あの時は必死で考えたんですよ! どうやって彼を引き留めるかって!!」
「へぇ、あの時って? 俺ら何にも見ちゃいねぇけどなァ」
エルマンはさらに慌てて両腕を振りまくる。「にに兄さん、ホントからかうのやめて下さいぃ!! えーとアレはですね・・・そうそう、一種の交渉術ですよ!! 頑固な方を相手にする際は、こちらが先に自らの心を開いたように見せるっていう・・・見事にゲラハさんが落っこったみたいで良かったですよ、ホント」
そう言いながらも、エルマンの額からは大量の冷や汗が噴き出している。
「あ〜そうかいそうかい。じゃあそういう事にしといてやるよ」「そういう事にって、そういう事なんですってばホークさん!! あの時のは全部嘘八百ですからね、私が一生懸命考えて渾身の泣き演技したんですから分かってくださいよ!!」
「あの時って? 私たちな〜んにも知らないけどなぁ、エルマン。というかね、私から言わせてもらえばアンタの演技、そんなに上手じゃないはずだけどねぇ・・・特に泣きの演技は」
「プロのバーバラが言うんだから間違いないよね。少なくとも、いつものウソ泣きでゲラハさんが落ちるとは私も思えないなー」
「な、ナタリーまでそんな・・・」
ほとんど涙目になったエルマン。その横を、全く空気を読まずにダークが通り過ぎた。「・・・何をしている。時は金なりなのだろう、行くぞ」
そのままスタスタとダークは出ていく。我にかえり、慌ててエルマンは叫んだ。「そ、そうですよダークさんの言う通りです! バカなことばっかり言ってないで、さっさと行って早く帰りましょ! 全くもう!!」
「うわ!? わ、分かったからもういい加減その偽ろば骨出すのやめろって!!」
「ジュエビ戦前にこんなトコで怪我するわけにゃいかねぇからな・・・野郎ども、行くぞ!!」




ジュエビ決着編〜あたしが親分、あんたら子分〜へ つづく。


 


 

 

 

というわけで──いつの間にやら3部構成が当たり前になってしまったこのシリーズ。ついにジュエビ本戦までが中編に追いやられましたw
次回は満を持してのあの方のご登場。の前にジュエビ戦です。
それにしても何をとち狂って私はゲラエルを書いたのか。そろそろ本心を吐露するエルマンってのを書いてみたかっただけなんですが、今のところ一番その相手としてしっくりくるのがゲラハさんだったという・・・うーん何故なのか。さすがはミンサガ1の渋キャラというべきか。つーか姐さんやジャミル相手だと逆に最後まで本音を言わなさそうな気がするんだよなぁ。どんなに相手から見破られていても。
だからこそ、エルマンのあの「一人にせんでくださいよ〜」は、姐さんの前だから明るく振舞おうとしてるけどチラっと本音を出した貴重な台詞だと思う。ホントはその予定なかったけどあの台詞で連れてくことにしたって方もいらっしゃるようだし(この前ニコ動で確認)、結構この台詞で心動いたプレイヤーは多い。はず。と思いたい。


ホーク編の序盤ですが。ホークさんも上で言ってる通り、マジキツかったです。
あと、エルマン連れた時には既にゲッコ族イベントクリアしたように書いてますが、実際の順番はヤシ村クリア後だったと思う。だって戦闘回数が・・・あの海賊どもと戦闘突入したら逃げられないってそりゃないぜ(泣)
そして古文書のおかげで金もないときた。中途半端にフィールドアーマー買っちゃったせいでますます窮地に。エルマンぶち切れまくっているだろうな〜と思いながらプレイしてました。
さらに言うと、この時点では皆さん揃いも揃ってろくな技覚えてなかったってのもキツかった。タイラント先生でどうにかフライバイとかかと切りは覚えたのですが。柱壊しの時点でエルマンなんかブラッドスパルタンがまだだったし。
柱壊しといえば、周を重ねるごとにやたらキツくなってきている感があるのは事実。前はパトさんやミリアムの火の鳥が強すぎたせいで比較的軽く感じただけだろうか。
そして、最前列に城塞騎士一人をオトリとして放り込むというのは一応攻略法の一つではある(はず)
ただ、運命石をその城塞騎士に集中させる必要はないかと。むしろ後列の誰かに集中させた方が効率的かな?とは思います。
エルマンに集中させたのは完全に趣味です。


あとついでにもう一つ。エルマンの髪型についてもやっぱり捏造なんですが・・・色々イラストサイトとか見てみると皆さん、結構普通のボサボサ頭って感じにエルマンの頭を描かれていることが多いのでそれをそのまま採用ということで。実は元ネタがどこかにあったりするんだろうか?
というか今更、実はパトさんのようなオカッパでしたなんてバラされても非常に悩んでしまうんですが。

 

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