真サルーイン戦inグレイ編

 

ほぼ実話プレイ日記SS風第5弾・・・の、続編の決着編。
ガ○ダムを引き連れたグレイさんは、果たして真サルに勝利することが出来るのか。
毎度のことで申し訳ありませんが、くれぐれも攻略の参考にはなさらぬようご注意願いますorz

 

 


イスマス城地下──サルーインの直前にて。
「というわけで、ガ○ダムたちは遂に運命の間にたどりついた」
運命石を見事に10個、何のためらいもなく捧げた後、グレイはほぼ全く感慨なさげに呟いた。
「うわぁ、こうして見るとキレイだね〜! おじいちゃんたちに申し訳ないけど・・・」
「改めて眺めると感無量ですねぇ〜、一体どの程度の大金で売れることやら」
「もったいねぇよなぁ。せっかくこれだけ手に入れたデスティニーストーンをみすみす捧げちまうなんて」
決戦前の興奮のせいか、ジャミルもアイシャもエルマンもやけに気分が高揚しているようだ。しかしただ一人ラファエルだけは、どうしても彼らの行為に納得がいかない。
「もったいない・・・? ジャミルさん、貴方はそんな感情しかないのですか! この状況に対して!」
「ら、ラファエル? お前まだンなこと言ってんのかよ、こんなトコで駄々こねてたらコレ、またまた種小説並みの長さになっちまうぞ?」
「そーだよ、前回のラスト一文は何だったの? 運命に従うまでだとか何とか」
「確かにお気持ちは分かりますがねぇ。これだけの大金をサルーインに捧げちまうなんてね」
「エルマンさん、私は金のことを言ってるわけではありませんっ! グレイさん、今からでもこの運命石を引き戻すことは・・・」
「できない」グレイはあくまで冷たい。「前にも説明したはずだ。
俺たちが時間の牢獄に閉じ込められているのだとしたら──今までと同じ方法でサルーインを倒しても意味がないと」
「それは分かっています。しかし、デスティニーストーンをサルーインに捧げることで何が変わりますか!?
何かが変わる、私はそう信じたからデス神ともシェラハ神とも相対してきました。しかし・・・」
「変わらなければ、別の方法を考えるまでだ。お前たちはガ○ダムだからな」
「というわけでラファエルさん、今更ゴネても始まりませんよ! 
サクっと真サルーインを倒して、早く帰りましょ! ディフレクトと水竜剣での回復、お願いしますよ〜!」
言いながらエルマンは、その小さな身体の倍ほどもあるウコムの鉾を意気揚々と担ぎあげる。この状況下で何故彼がそこまで調子づいていられるのか、ラファエルは理由を聞いてはいたが、理解が出来なかった。
「お金の為とはいえ──何故貴方はそこまで出来るんですか? ウコムの鉾でのオーヴァドライブなんて、自殺行為に等しい」
「金の為だからですよ」即答するエルマンを、ラファエルは信じられないという顔つきでまじまじと凝視してしまう。
「・・・あのねぇラファエルさん。こういうこと言うと決まって貴方のような高潔な方々にはそーいう顔をされるんですが、私ら庶民にとってお金は大事なんですよ」
「そうそう! 私なんかお金全然なかったから南エスタミルから船にも乗れなかったしねー」
「そもそも俺らの防具だって、金がなきゃ揃えられなかったんだぞ。金を大事にするのと金に汚いってのは違うぜ・・・
フィールドアーマーとドミナントグラブがどれだけかかるか知ってるか? ガーラル強化だってバカにならなかったんだぞ。
もっとも、俺が財宝漁ったおかげでアンバーマリーチや流星刀はタダで手に入ったけどな」
口々に言われ、ラファエルは納得いかないながらも黙り込む。エルマンがさらに言った。
「お金ってのは、物の価値は勿論ですが人の行動の価値を決める最高の基準でもありますから。そうでしょ、グレイさん」
グレイはそれには答えず、サルーインが鎮座しているであろう奥の間だけを見つめている。「金だけで、人は生きられない。かといって、名誉と誇りだけでも生きられはしない。
だが、ガ○ダムがある限り──人は生き延びる!」
「グレイ・・・途中まで名台詞っぽかったのに、ガ○ダム云々で台無しだぞ」



そして遂に、真サルーインとの決戦の火蓋は切られた。
作戦は非常に単純──
まず、城塞騎士であるラファエルが最前列となり他全員を守る。
重装兵となったグレイも同時に出来る限り壁となる。
他3人はひたすらオーヴァドライブを繰り返す。ただしエルマンはウコムの鉾経由で。そしてBPが切れ次第アイシャが聖杯を使用。
まず第一形態。オブシダンソードやら空閃やらが怒涛の如く降ってくる中、ジャミルとアイシャが次々とオーヴァドライブして変幻自在や連射を繰り出す。そしてエルマンも強化済みモーグレイを抱えつつ、オーヴァドライブで飛び出した。
「このヴェルニーソードの最強一人連携、叩き込んでやりますよっ!」柄にもなく叫びながらエルマンはヴァンダライズ⇒アッパースマッシュ⇒ヴァンダライズ⇒アッパースマッシュ⇒ヴァンダライズの一人5連携を繰り出す──
「あれはまさか、世界最強と言われる一人5連携!?」
「その通りだ。奴に様々な技を覚えさせ、モーグレイもヴェルニーソードになるまで強化したのはひとえにこの為──」
驚くラファエルに、グレイは刀を構えつつ呟いた。「流石はヴィクトリーガ○ダムだ。ここまで育つとはな」
だがそのグレイの珍しくちょっと得意げな笑みも、一瞬後に曇る。アイシャの絶叫。「え!? 今の・・・殆ど防がれちゃったよ!?」
「なっ・・・攻撃、無駄でしたかっ!?」信じられない現実に、エルマンも思わず目を剥いた。その通り──威力は絶大ではあるもののモーションがかなり大振りなこの技は、いとも簡単にサルーインのオブシダンソードで殆どが弾かれてしまっていた。「な、ならもう一度やるまでですっ!!」
勇ましく剣を構え直すエルマンだが、ジャミルが叫ぶ。「バカ! もうその剣、使えねぇぞ!」
「えぇえ!!? ・・・ふあぁああ、またお金が無駄になってしまいましたぁああ!!」その通り、エルマンが手にしたモーグレイは、見事に刃がボロボロと崩れ去ってしまっていた。
「攻撃もLPも無駄になったけどな。つーかこの期に及んで金、金・・・ホント尊敬するぜ」
「ともかく、この第一形態中はディフレクトされやすい技は禁忌だ。ジャミル、アイシャ・・・お前たちはロペラとフランシスカで連携を叩き込め! ラファエルはこのまま皆を護れ」
「あ、あのグレイさん、私は・・・」
「お前にはダークの剣がまだある。変幻自在を5連発だ」かすみ二段をサルーインに喰らわせつつ、グレイは皆に指示を重ねた。
「やっぱりウコムの鉾経由オーヴァドライブは続行なんスね・・・」
その間にもジャミルが変幻自在と電光石火、アイシャはフライバイとかかと切りで一人連携攻撃を繰り返す。エルマンも負けじとLPを使って再びオーヴァドライブし、変幻自在の5連発を叩き込む。──勿論サルーインのオブシダンソードに無窮自在に空閃が次から次に降ってきたが、ラファエルが攻撃を受けつつも見事にディフレクトしていった。
そして、サルーインは遂に第二形態へと変化する──



サルーインが真の姿を現し、天空に19本の柱が出現した──
もうこの時点で、エルマンのLPは早くも半分を切っていた。
「なぁ・・・何でもうそんなに減ってんだ? お前のLP。そんなに攻撃してたっけ」
「一度壊滅状態になって、私が起死回生のウコムの鉾オーヴァドライブで皆さんを回復したからでしょ! 全くもう!」
「構わん。もう一度オーヴァドライブして皆に生命の炎だ、エルマン」
「わ、分かりましたよぉ! ホンットに人使いが荒すぎますねぇ、グレイさんは・・・」
「LP使いが、じゃねぇ?」
弱音を吐きつつも体勢を立て直すエルマンに、敢えて軽口を叩いてみせるジャミル。見かねたラファエルが割り込んだ。
「もう本当に冗談では済まされないレベルまでエルマンさんのLPが減っています! これ以上は・・・」
「いや、続行だ。ガ○ダムにその意思がある限り、俺たちは止まらない」
「つーか、第二形態中だと生命の炎じゃないとろくな回復できねぇし」
その間にもサルーインの鬼畜技、ゴッドハンドが飛んでくる。巨大な神の手で人間を掴み、身体を力まかせに握りつぶすこの技は、例え復活術リヴァイヴァがかかっていてもそれすら貫通し対象を死に至らしめることがある──まさに神の技だ。
ろばの骨でグランドスラムの構えに入っていたアイシャ。彼女に向かって飛んできたそのゴッドハンドを果敢に防ぎながら、ラファエルは怒鳴る。「人の命をいとも簡単に吹き飛ばす! これが、神のやる事かっ!!」
サルーインは聞いちゃいない。<何を戯言を! 破壊こそが我が全てよ、貴様らも苦しみ苦しみ苦しんだ末、屍を晒すのだ! あのミルザのようにな!!>
「何を!」突貫してきたサルーインのゴッドハンドを二度までも止めるラファエル。その隙にアイシャがグランドスラムを決める。盛大に床が崩れ岩が巻き上がり、次々に壊れていく神の柱。エルマンが全員に放った生命の炎でみるみるうちに傷も回復していく──だが。
「ふぅ、はぁ、ひぃ・・・」エルマンは、もはや汗だくになり膝をつきかけている。それでもなお彼はウコムの鉾を構えた。
「エルマンさん、もうやめて下さい! これ以上は・・・」
ラファエルの言葉も聞かず、エルマンはオーヴァドライブを発動させる。そして床を蹴って飛び上がり──
「エルマン!? まさか、体術やる気かよっ」
「もしかしてあの、稲妻キックと羅刹掌と三龍旋の連携? でもあれって・・・!」
ジャミルとアイシャが叫んでいる間にも、サルーインに向かって巨大な龍にも似た嵐が吹き荒れ、その中から雷撃を纏った蹴りと拳が次々に飛びだし、神の体躯を直撃する。体術の最強一人連携と言われる技・・・稲妻キック⇒三龍旋⇒羅刹掌⇒流体拳⇒羅刹掌の5連携技だった。
「だがあの連携は、LPを最低でも3は消費してしまう・・・無茶だ、いかにヴィクトリーといえど」
グレイの目に、僅かながら焦りが見え隠れした。「グレイ、あんたでも無茶だなんて台詞言うんだな・・・でもサルーインの奴、かなりいい感じにやられてるぜ!?」
大ダメージを喰らって咆哮するサルーイン、そして空中から飛び降りてきたエルマンは──そのまま崩れ落ちてしまいそうになる。
「もういいエルマン! 後は俺たちに任せろっ」「そうだよ、もう二度とオーヴァドライブやっちゃダメだよ!?」
もはや立っていることすら精一杯のエルマンは、それでもダークから託された曲刀──サダル・メリクを構えた。慌ててラファエルが止める。「これ以上は危険です。エルマンさん、下がっていてください!」
その間にも、エルマンを的確に狙ったゴッドハンドが飛んでくる。神の拳を懸命に弾くラファエルの後ろで、エルマンはふらふらと前へ踏み出した。「馬鹿なことは止めてください、後は我々に任せて! 何が貴方をそこまでさせるんですっ」
迷うことなくエルマンは即答する。「・・・金っス」
「そんなわけがない! 金だけで、命をそのまま投げ出すようなこんな無茶が出来るわけが!」
「バカにせんで下さいよ。金の為に命をドブに捨てるなんて、阿呆のやることです」
「だったら何故・・・ッ!!」一瞬の隙を突かれたラファエルは、まんまとゴッドハンドに捕えられて握り潰される。
「ラファエルさんっ! こ、このっ」慌てて変幻自在の構えに入るエルマンだが、それよりゴッドハンドの方が早かった。
声を上げる余裕すら与えられず、エルマンの身体は邪神の掌に捕らわれる。そして──
「い・・・イヤああぁあああああああああっ!!!!」アイシャの絶叫と共に、彼の身体は巨大な掌の中で完膚なきまでに握り潰された。その命ごと。



──姐さん。やっぱり私にゃ、無理だったんですよ。
一介の会計係なんぞに、真サルーイン神を倒すとかそんな・・・
ふと気づいた時、エルマンは何もない空中をふわふわと漂っていた。
どうやら自分は天に召されたようだ。ぼんやりと星空が真上に広がって・・・どこかから声が聞こえる。
──エルマン。エルマン! 駄目だよ、死んじゃダメ! もう死んじゃイヤだよ!!
──ホントにバカだね、アンタは! いつもは命も金もあれだけ惜しむ癖に、なんであんなことしたの!?
自分を見ながら涙を流す少女と、その後ろから本気で怒ったように自分を見つめる銀色の髪の女性。
「ば、バーバラ姐さん? それにナタリー? どうしてここに・・・」
身体が動かせることに気づいたエルマンはふと起き上がる。真上には星空、そしてここは──何故か雲の上だった。
「さ、サルーインは!? グレイさんたちはどうしましたか・・・って、ブフッ!?」
起き上がった途端、エルマンは突然バーバラに思い切り頬を張られた。「サルーインは、じゃないわよ! ナタリーをこんなに泣かせて、アンタ自分が何したか分かってるの!?」
「え、え?」殆どワケが分からないが、どうやらバーバラはついさっきの戦闘に関して激昂しているようだ。
何故バーバラがさっきの激戦のことを知っているのかさっぱりだったが、それでも思わずエルマンは反論してしまう。「でも姐さん、ウコムの鉾でのオーヴァドライブは真サルーイン戦では必要不可欠で、それは姐さんもご存知のはずでしょ!? いきなりビンタは酷いですよぉ〜!! 
・・・って、うわぁっ?」
「エルマ〜ン! もう嫌だ、もうエルマンがあんな風に死んじゃうのはイヤ〜!!」ナタリーがエルマンに抱きついて火がついたようにわんわん泣き始める。何がなんだかワケが分からず、エルマンはしどろもどろになってしまった。「いや、あの、えっと・・・」
「ウコムの鉾のオーヴァドライブ自体は分かってたことだから、私は別に構わないのよ。それでアンタが死にさえしなければね。
問題はその使い方よ! な・ん・で、わざわざLPを大量消費するような体術の連携技を使ったの!?」
「そーだよそーだよ!! モーグレイは確かに使えなくなったけどまだ曲刀だって使えたし、流星刀だって持ってたじゃない! どうしてそっちを使わなかったの!? うう・・・」
バーバラとナタリーが口々に責める。死んだはずの自分に何故この二人がくっついてきているのかエルマンには不思議でならなかったし、走馬灯で見ている夢にしてはやけに現実味を帯びた彼女らの台詞も気になったが──反射的に彼は謝ってしまった。
「す、スミマセン。私が悪うございましたぁ・・・いわゆるその、芸人魂ってヤツですかね」
「はぁ?」「げ、芸人魂?」
エルマンは真っ赤になりながら頭をかく。「どうせ命を削るなら、ド派手な技を決めたいとかいう欲が出ちまいまして・・・どうでしたかね、私の稲妻キックと羅刹掌と三龍旋の連携」
「・・・・・・・・・(怒)」「・・・・・・・・・(困)」
「そりゃあ流石に姐さんの踊りとナタリーの歌にゃ叶うわけがありませんが、これで私も姐さんの前座の曲芸師ぐらいには・・・グボハァッ!?」「んなふざけた芸人魂をアンタに教えた覚えはないよっ!!」
今度はさっき殴られたのとは反対側の頬を見事に殴られるエルマン。「あ、姐さん酷すぎますぅ〜!! グーは止めてください、グーは! 歯が折れちまいますよぅ!!」
「折れた方がちょうどいい長さになるんじゃないのかい」「そ、そんなぁ。これ私の数少ないチャームポイントなんですから!」「ウィークポイントの間違いじゃないかな、エルマン・・・」
「ともかく」バーバラは言いながらエルマンの手を強引につかみ、立ち上がる。その眦には僅かに光るものが見えた。「来なさい。アンタがやらかしたことで、グレイたちがどうなったか──」



雲の果てでは、帽子を目深に被った詩人が眼下を眺めていた。彼はその象徴ともいえるツインネックのギターを静かに奏でながら、何も言わずにバーバラたちを待っていた。
「エロール・・・じゃなかった、詩人さん。連れてきたよ」放り出すようにバーバラはエルマンを詩人の前に追いやる。「エロ・・・じゃない、詩人さん? どうして貴方がここにいるんです?」
詩人は無言で、ギターの弦をつま弾く。と、エルマンの眼下の雲が一気に開け──その下に見えたものは、つい先ほどまでエルマンがいたはずの、天空の決戦場。
「あ、あれは!? サルーインと・・・グレイさんたち!?」
詩人が初めて口を開く。「そう──エルマン。正確には、貴方が命を落として以降の彼らの姿です」
よくよく見ると、ラファエルの少し後ろあたりに血まみれになった黄色い帽子が見える。それを見て、バーバラの後ろからついてきたナタリーが思わず目を背けた。
「あっちゃぁ〜・・・私、ホントに死んじまったみたいですねぇ。イヤですね、こうして自分のグロ死体見るのは。内臓まき散らしまくってますし」見るも無残な自分の姿を目にしつつも、エルマンは意外にあっけらかんとしたものだった。
「何を呑気な! 全くもう」「だって姐さん、こうして普通に喋れるんですし、実感ないっすよ・・・」
「いいから、よく見てみなさい」バーバラの言葉に素直に従うしかなく、エルマンは彼らの戦いを見守る──
「貴方が死亡したことで、彼らの士気は明らかに激減してしまいました。ですがグレイは最後まで的確な指示を続けた」
絶叫しながらロペラで変幻自在を食らわすジャミル、涙をこらえながら連射の一人5連携を叩き込むアイシャ。冷静に月影の太刀でサルーインを貫くグレイ。果敢に彼らを守り続けるラファエル──そして、サルーインの最終奥義とも言うべき剣の雨が降り注ごうとしたその時。
「おおお!? サルーインの動きが止まりましたよ・・・これは、もしかして!?」
眼下でサルーインが力尽きたかのように頭を垂れる。最後の力を振り絞り、そしてあたりは光に包まれ──
「こ、これって!! グレイさんたちは勝ったんですよね!? こここりゃ凄いことですよっ、デスティニィストーンを全て捧げたサルーインに勝利するなんて、今までなかったことですよ! これでグレイさんの言っていた時間の牢獄とやらも・・・」
興奮してまくしたてるエルマンには目もくれないまま、眼下を見つめつつバーバラは呟いた。「そうね。ただ、問題が一つ・・・」
「? 何ですかい」
「グレイは満足しなかったんだよ。こんな勝利はね」
「はい?」
「彼は願ったのです」詩人がおもむろに語り始めた。「このような勝利は意味がない。ガ○ダムが全員生存していなければ、勝利には全く意味がないと──だから、彼は願った。決戦前まで時間を戻すことを」
「は、はぁあああっ!? それってつまり・・・」
エルマンはまたもや目を剥いてしまった。詩人はそんな彼の面白顔を見ないよう、さりげなく視線を逸らしながら続ける。「そして私は彼の願いを叶えた──ガ○ダムが全員生存するまで戦いを続けさせてほしい、その願いを。その結果が、あれです」
光にかき消されたはずの決戦場に、再び邪神の姿が現れる。そしてグレイたちの姿も──「先ほどと違うところは、エルマン。貴方自身がちゃんと生きて、あそこにいるという点だけです」
「えええええ〜・・・」



そしてエルマンたちの眼前に展開されたのは、何度も繰り返される地獄絵図。
LPの尽きかけたエルマンがアニメートされ、死亡同然の状態となった挙句に仲間を火の鳥で焼き殺したり。
サルーインのゴッドハンド連発でジャミルもアイシャもLPが尽きて死亡したり。
心の闇の連発で全員が睡眠状態となり、邪神のなすがままにされて全員死亡したり。
体力万全の状態からゴッドハンドを連発され、一瞬で総崩れになったり──
自分たちの全滅をあまりに大量に見せつけられ、エルマンも意気消沈せざるを得なかった。「鬼畜ッスね・・・さすがは邪神様です」
「今度こそうまく行きかけている──と全員が思った瞬間に、奴は暴れだす。それが最も恐ろしい」
「ホント、グレイさんの仰る通りで・・・って、えええぇえ!?」
背後から突然聞こえてきた声に慌ててエルマンは振り返る。そこには──
ついさっき、エルマンたちの眼下で酷い死にざまを晒したばかりのグレイ、ジャミル、アイシャ、そしてラファエルの姿があった。
「ででででで、出たあぁあああああ〜!!!! ああああ姐さん、助けてくださいぃいい!!」
「出たって・・・お前も今や幽霊みたいなもんだろうが!」
「えっへへ・・・エルマン、久しぶり・・・でもないか」「皆さん、申し訳ありません。このような無様な姿を晒すなど、騎士の恥・・・」
会って早々エルマンにくってかかるジャミルに、きまり悪げなアイシャにラファエル。だがそんな彼らを完全無視し、グレイはエルマンの腕を掴む。「行くぞ。もう勝算は見えた」
「えぇ? また行くんですかい」
あの世?での奇蹟の再会に対する感傷の一つすら見せず、グレイは言う。「当然だ。俺の目的はただ一つ──ガ○ダム全員が生きのびて、奴を倒すことだ」
「そうそう。俺らのうち誰が欠けても、そりゃ勝利なんて言わないぜ! 全員が生き残るまで、何度だってやってやるさ」
「そうだよ。一緒に行こう、エルマン!」
「エルマンさん──」ラファエルがエルマンに手を差し伸べる。「貴方の戦う動機が本当に金だけなのかどうか──もはやそれは二の次! あの鬼神の如き戦いぶり、貴方こそが真の戦士です」
「い、いや止めてくださいよぅ」エルマンは真っ赤になって首をぶんぶん振りまくる。「私しゃただの会計係ですってば! 身体が痒くなっちまいます」
「今度の戦いは任せてください。必ず、私の命にかえても貴方をお守りします!」
「そ、それは嬉しいですしありがたいですし是非ともお願いしたいところですが・・・グレイさぁ〜ん(泣)」
そんなエルマンに、グレイはふと視線をやる。そして一言。「一つだけ言っておく。必要以上に命を消費するな──俺は無駄が嫌いだ」
「うへぁ・・・やっぱり、さっきの体術連携の件か」「これ、相当怒ってるね・・・」
「当たり前よ」バーバラがすっと進み出る。「エルマン、どうせやるならまだ一度もやったことのない技を披露してみせなさいな。
アンタ流星刀まで持たせてもらったんだろ? だったらやってみなよ、乱れ雪・月・花!」
エルマンは思わず腰を抜かした。「でぇえ!? そそそそそれこそ無茶ですって姐さん! ありゃ完全に運がらみですし、人には出来ることと出来ないことが」
「駄目だよっ」アイシャが素早く割り込む。「ずーっと前からエルマンは乱れ雪月花やるやるって私たちに約束してたじゃない!」
「あ、アイシャさんまで・・・アレはアイシャさんやクローディアさんや姐さんが勝手に言い出したことであって、私しゃどなたともそんな約束をした覚えは! そもそもアイシャさん、あの時あたりから皆さんから私への無茶ぶりが酷くなって今やこんな、城塞騎士と武芸家と旅商を全部兼任するローザリア術法士なんてキャラになっちまって!」
「ねぇエルマン、私とは約束できない? 私もエルマンの乱れ雪月花、見たいな」
「な、ナタリーまでそんな・・・」
「あ〜もう畜生、そんなツラしてモテモテの超絶リア充じゃねぇかお前も。せっかくだから答えてやったらどうだ、ファンの皆様によ」
「そんなぁ〜、兄さんまで無茶ぶりマジやめてくださいぃ!」
わいわいと騒ぎ立てる彼らを、グレイが制する。「もう時間がない、行くぞ。エロール、また転送を頼む」
臆することなく詩人を本来の名で呼ぶと、詩人は無言で頷いた──ジャミルもアイシャもラファエルも、再び決戦場へ向かう戦士の顔になる。「エスタミルは、今度こそ俺が守るぜ」「おじいちゃん・・・」「コンスタンツ、必ず・・・!」
「仕方ないですねぇ。そんじゃ、行きますか」やれやれとばかりに腰を上げるエルマンを、バーバラは不意に背後から抱きしめる。「ほぇ? 姐さん・・・?」
ふわりと漂う色香。背中にぎゅっと押し付けられる豊満な胸。いつかのように冗談で彼女が抱きしめたわけではないことは、エルマンにも理解出来た。耳元で囁かれる言葉──
「死ぬんじゃないよ。絶対に、もうあんな風に死ぬんじゃない。
今度ナタリー泣かせたら、殴るぐらいじゃすまないから」
バーバラに後ろから抱きすくめられ、ほぼ足が浮き上がりかけているエルマンを、ナタリーがじっと見上げる。「ホント、約束だよ?」
「・・・あのですね姐さん、ナタリー。お約束はしたいのですが、何せ相手が相手ですから・・・」
「約束して!」ナタリーの怒鳴り声と同時にバーバラの両腕がエルマンを締め上げんとばかりにキツくなる。「わわ、分かりました、分かりましたよぉ! 保障は出来ませんが、出来るだけ戻ってきますから」
「保障して!」「出来るだけ、じゃない! 必ず!」「・・・ふぁい。必ず、戻ってきやす(泣)」
しびれを切らしたのか、グレイが少し大声になってエルマンを呼んだ。「いつまでやっている? 行くぞ、ヴィクトリー」
「あぁもう、最後までヴィクトリーなんですね・・・全く」



やがて5人の姿は光に包まれ、その場から消えていく。
残されたのは詩人とバーバラ、そしてナタリーの3人。「ねぇ、詩人さん。エルマンたちが真サルーインを倒したら・・・本当に今度こそ、世界は平和になるの?」
ナタリーの問いに、詩人は静かに答えた。「分かりません。何故なら私とて、時間の牢獄に閉じ込められた者の一人ですから」
「なんだ、アンタも分からないのかい。アンタをとっつかまえれば、何か分かるかと思ったのにねぇ。
ウエストエンドでいきなり町が真っ暗になったと思ったらいつの間にかここに来ていて、目の前にアンタがいたから、ちょうどいいと思ったのに」
「神はそれほど万能な存在ではありませんよ。ただ、エロールら神々よりさらに上位の神が存在するならば──」
「アンタより上位? そんな神さま、存在するのかねぇ」
「──ただ今は、彼らを信じるのみです。神々も、我々も」



「作戦は先ほどまでと同じ──ただし第一形態では大振りな技は危険だ、可能な限り多段攻撃を行なえ」
「了解!」グレイの指示のもと、ジャミルとエルマンが一斉にオーヴァドライブによる変幻自在5連発をサルーインに叩き込む。アイシャも弾かれやすい弓攻撃は避け、ジュエルビースト退治で大活躍したフライバイ⇒かかと切りによる一人連携で邪神を直撃した。
最前列ではラファエルが必死でサルーインの空閃を受け止めては、オブシダンソードを弾き返す。
そしてほどなく第一形態から第二形態へ。これ以上を望めないほど、戦いは順調に進んでいた──
「問題は第二形態──ジャミル、お前は可能な限り変幻自在と電光石火の一人連携を続けろ」
「てか俺、回復以外だとそれしかやってねぇんだけど!?」
「構わん。倒れさえしなければいい! エルマン、お前はオーヴァドライブ後、まずは全員に生命の炎だ」
「分かりましたよ! 全く、人のLPを何だと・・・」
「ねぇグレイ、グランドスラムはいつやればいいの?」「誰もオーヴァドライブを発動させていない時か、もしくは自分のオーヴァドライブ中だ。柱がまだ半分以上立っている時はとにかく柱を壊すことに専念しろ」
いつになく饒舌にグレイが指示を出す。その結果、比較的大した被害もなく柱はいつの間にやら半分以下になっていた──
「今だ! 行け、ヴィクトリー!」
「ああもう、突っ込むのも野暮なんでこのまま行きますよ! こんチクショー!!」ヤケクソで飛び上がりつつオーヴァドライブを発動させたエルマンの手には、限界まで強化されたモーグレイ──ヴェルニーソードが光っていた。「今度こそ決めてやります、姐さん!!」
そして炸裂する、ヴァンダライズ⇒アッパースマッシュ⇒ヴァンダライズ⇒・・・の一人5連携。エルマンの言葉通り、今度こそは見事にその連携は決まり、邪神は思わず痛みの雄叫びをあげる。「やったぁ!」アイシャの感激の声が上がった。
「数値にしてざっと1万超、ってトコっスかね・・・ヘヘ」着地後、もはやボロボロで使い物にならなくなったモーグレイを惜しげもなく背後にかなぐり捨てると、エルマンは素早くウコムの鉾を構え直した。
だがまたしても邪神は荒れ狂い、術を一人で連携させて雷撃まじりの暴風やら、火炎竜巻やら鯨やらでパーティに襲いかかる。こちらの攻撃が激しければ激しいほど、相手の攻撃も倍加していく。あまりの攻撃に、さすがのパーティも押されていく──しまいにはクラックによる土煙で、周囲が見えなくなってしまった。
タイタスグリーブで土術への耐性をつけているとはいえ、味方の様子がよく見えずエルマンは咳き込んでしまう。そこへ容赦なく飛んでくるゴッドハンド──「う、うわあぁあああっ!? たたた助けてくださいぃ!!」
その情けない声が聞こえたのかどうなのか。最強のディフェンダーを携えた城塞騎士が、颯爽とエルマンの眼前に飛び込み、ゴッドハンドから彼を守った。
「ら、ラファエルさん!?」
「早く・・・エルマンさん、オーヴァドライブを!!」
全員を守ることに奔走していたラファエルの体力も最早底を尽きかけていたが、それでも彼は神の拳に抵抗している。慌ててオーヴァドライブの詠唱にかかるエルマンだが──「ラファエルさん、貴方も逃げてくださいよ! このままじゃ・・・」
「この世界と貴方がたを守って死ねるなら、それが騎士として本望というもの! 私に構わず、早く!」
「冗談じゃない、逃げられる時は逃げましょうよ! テオドールさんが仰ったこと、アンタ一つも分かってないじゃないスか! 生きのびることこそが騎士としての名誉にとか何とか・・・」
すぐさま二度目のゴッドハンドが飛んでくる。ただでさえ恐ろしい威力のこの拳を、またしてもラファエルは剣で弾き返した。ただ、既に彼の膝は折れる寸前だ。
「ラファエルさん、もう駄目ですよ! コンスタンツさんだって待ってるでしょ!」
「コンスタンツだって分かってくれるはず・・・騎士の妻であれば・・・」遂に三度目の神の拳が、今度こそラファエルを叩き潰そうと突貫してくる。ラファエルが一瞬よろけた、その隙を狙って。
「全く、これだから名誉とか誇りって嫌いなんですよ! 一文の得にもなりゃしないっ!!」たまりかねたエルマンが、ウコムの鉾を構えてラファエルの前に飛び出す。「いけない! 避けてください、エル・・・!?」
光と共にエルマンの真正面に飛んできたゴッドハンド──だがそれを、彼はラファエルの眼前で見事に弾き返してみせた。
信じられない光景に、ラファエルは思わず息を呑む。「な、何故・・・」
エルマンは背中を向けたままだ。小さなはずのその背中が、今のラファエルにはやたらと大きく感じられる。「お忘れですかい? 私も一応、城塞騎士のスキルは最大限上げてるんで」
言いながらエルマンはオーヴァドライブの詠唱を続け──さらに流星刀を抜きはなった。
「エルマンさん──何故です? 何故貴方は、金の為にここまで出来るんですか?
金の為に命を捨てるような真似をするなど・・・!」
「だから言ったでしょ。そんなの、阿呆のすることだって」
青く光り輝く刀を手に、エルマンは思い切り歯を出してニっと笑ってみせた。「こんな世知辛い世の中です──
どうせ生きるんだったら、少しでも楽しく生きたいでしょ。私しゃ姐さんやナタリーや皆さんと一緒に楽しく生きたい、それだけなんです。
だから金を稼ぎたい、それだけですよ」
言うが早いか、エルマンは猛然と邪神に向かってダッシュをかける。青い刃が閃いたかと思うと、一瞬辺りが暗くなり、縁を眩い白に輝かせる三日月が見えた──「あれは、月影の太刀・・・まさか、その5連携!?」
「そうだ」いつの間にかラファエルの背後にいたグレイ。彼はいつも通り冷静にその光景を眺めていた。「あの技は無足でも加撃でも連携が繋がる。うまくいけばダメージは最大級だ──そして」
ほのかに煌く三日月の縁──そこから生まれたものは、無限に連なる桜の花びら。それはいつしか吹雪の如く舞い上がり、光の刃となって邪神を切り裂いていく。
「あれはまさか・・・本当に!?」
「魅せたな、ヴィクトリー。あれこそが刀技の最終奥義──乱れ雪月花だ」
星のように青く輝く刃を閃かせ飛翔し、凄まじい勢いで神を切り裂いていくエルマン──それを見て、グレイの言葉はいつになく感慨深げだった。「見るがいい、ヴィクトリーの背に光の翼が輝いている。まさにヴィクトリー・ガ○ダムの再現だ」
「は? ・・・た、確かに見方によってはそうも見えますが」グレイの唐突な言葉に戸惑ったラファエルだったが、胸にわきあがるこの言い知れぬ感動だけは認めざるを得ない。「しかし──美しい技です。彼の生命力に相応しい」
「死に瀕しての生への飽くなき執着。これこそが、ガ○ダムという奇蹟を生む」
しまいには月と桜を見ながら茶でもいただきそうな雰囲気になってしまったグレイとラファエルだったが、突如のアイシャの声が空気を切り裂いた。「まだ終わってないよっ、みんな! 油断しないで!!」
桜吹雪がようやく収まったころにエルマンは空中から見事着地し、そのすぐ頭上でアイシャの連射5連携がサルーインに炸裂する。加撃の入った連射攻撃は針千本の如く邪神を射ぬいた。
「エルマン、おめでとう! 遂にやったねぇ〜!」
「へ? アイシャさん、やったって・・・何を?」「あれ、気づいてなかったの?! 今、乱れ雪月花やってたじゃない!」
「え・・・・・・でえええええええぇえ!? ささささっきのがそうだったんですかい!?
どうもいつもより身体が軽いとは思ってたんですが」
「何だよ、自分で気づいてないってやっぱりお前らしいよ・・・ってか、お前らまだホント戦闘終わってねーぞ!」アイシャに続いてジャミルもまた最強の細剣・エスパーダロペラで変幻自在と電光石火の5連携を凄まじい速さでぶちこんでいく。「全くボーっとしやがって、やっぱ俺がいなきゃ駄目だな」
軽口を叩きながら降り立つジャミル。だがもうその身体はボロボロだった。
「に、兄さん!? いつの間にこんな怪我を・・・」「さっきのトンデモ術法攻撃の時にちょっとゴッドハンドをやられちまってな・・・大丈夫さ、先にアイシャを回復してやれ」
「アイシャさんを? って、いつの間にアイシャさんぶっ倒れて!?」毒攻撃かゴッドハンドか術法か、いつの間にか倒れてしまっていたアイシャ。そのそばには壊れた聖杯が転がっていた。「・・・みんな、ごめんね。もう聖杯、ギリギリまで使い切っちゃった・・・」
それだけではない。エルマンがよくよく眺めまわしてみると、全員のLPがいつの間にやら半分以下に落ちていた。
「私が水竜剣でアイシャさんを回復させます、他の皆さんは攻撃を!」「俺はまだオーヴァドライブできる、どっちか早い方がアイシャを回復だ!」「わ、私もオーヴァドライブ行けますよ!」「誰でもいい。最も早い者がアイシャを回復、その後攻撃だ!」
だがそれより早く剣の雨が降りそそぐ。巨大な柱が何本も天空で砕け地上に落下し、その場の全員を粉砕する──そして能力を著しく減少させる呪いを帯びた19本の柱が再び、邪神を守るようにそびえたつ。
この時に立っていられたのは──ジャミルとエルマンの二人だけ。「畜生・・・やっぱり駄目なのか、ここまでやっても!」
「まだ、まだ行けますって! アイシャさんがギリギリで聖杯を使っていただいたおかげで、何とかオーヴァドライブは・・・」
「いいか、こうなったら俺がオーヴァドライブしてみんなを回復する。俺なら一度オーヴァドライブしても、みんなを回復させた後でもう一度できるしな」
「私だって行けますよ! 癒しの水かけた後もう一度オーヴァドライブでしょ!」「馬鹿野郎! んな真似したらまたお前のLPが削れまくるじゃねぇか、今だってお前もうヘロヘロじゃねぇかよ!」
「今柱が全部立った状態で兄さんの癒しの水に頼ったって、ろくな回復できるわけないでしょ!」「アニメートされるよかマシだろうが!」
などと言い争っている間に、サルーインの究極の邪術が発動する──倒れた者を人形に変化させ、邪神の思うままに操る術、アニメート。それが無防備なアイシャを襲った。
何の抵抗も出来ず、もう一度ふらふらと立ち上がったアイシャ。その眼は既に光がなかった。──「畜生っ!」
「兄さん落ち着いてくだせぇ! こうなりゃ両方でオーヴァドライブです、早い方が皆さんを回復です!」「仕方ねぇ・・・じゃあ二人で行くぜ!」
そして詠唱が開始される二人の水術──最初にオーヴァドライブに成功したのはジャミルだった。
エルマンの方が先に発動しなかったことに内心ほっとしつつ、ジャミルは呟く。「二度もバーバラ姐さんやナタリーを泣かすわけにいかねぇからな。今度こそ倒れてくれよ・・・サルーインさんよ!」
癒しの水で心ばかりの回復を全員に行いグレイとラファエルを立ち上がらせた後、ジャミルは再度オーヴァドライブ。もはや必殺とも言える、変幻自在と電光石火の5連携でサルーインを容赦なく切り裂いた──が。
「この野郎! これでも、これでもまだか・・・・・・!!」まだサルーインは倒れる気配を見せない。
「兄さん、大丈夫です! 私が行きますっ・・・アイテテ」「バカ、やめろ! お前・・・」アイシャの弓矢で軽く後頭部を直撃されつつも、エルマンはオーヴァドライブを発動させる。ジャミルの制止も聞かず。
「心配せんで下さい、もう無茶はしませんから! おりゃああぁ〜!」癒しの水を使った後に再度オーヴァドライブなどという無茶をやらかしたら、今度こそエルマンの命はもたない──それを危惧したジャミルだったが、幸いにもエルマンは回復には回らずそのまま流星刀をダークの剣に持ち替え、変幻自在5連発をぶちかます。ダークからちゃっかり拝借した曲刀でくるくる空中を舞いながら、エルマンはなかなか華麗にサルーインを切り刻んでいく。
「はぁ、はぁ、ひぃ・・・もう曲芸師の修行はたくさんですよ、どうやら乱れ雪月花もやれたみたいですし・・・ふぅ、ひぃ」
しかし着地まで華麗に・・・とはいかず、さすがに力尽きかけたエルマンは足元から崩れ落ちてしまう。慌ててジャミルとラファエルが駆け寄ったが、そこへ轟くは邪神の絶叫。
同時に飛んできたものは、目にもとまらぬ速度のゴッドハンド。それも同時に3発だった。「やべぇ! 奴さん、発狂したぜ!」
「私が皆さんを守ります、離れて!」「駄目です、こりゃ無理ッス、間に合わな・・・!」
エルマンの言う通り、ラファエルの咄嗟の防御は全く意味をなさず。
ほんの数秒の間に、ジャミル、エルマン、ラファエルの3人は全身の骨を砕かれ、邪神の眼前に横たわってしまっていた。
<神に挑むなど無謀だったのだ! お前を選んだエロールを恨むのだな! ハハハハハハハハハハハハハ、醜く生に縋りつく者を叩き潰す、これこそ至高の快楽よ! さぁ悶え苦しみ、絶望を晒すがいい!!! フフフハハハハハハハハハハ>
「畜生、うるっせぇんだよ、いちいち笑うなってんだ・・・クソっ」「ああぁ姐さん、スミマセン・・・もうカンベンしてくださいぃ」「コンスタンツ・・・」
狂笑するサルーインの前に進み出る、死んだ目のアイシャ。完全に表情を失った彼女は静かに3人に向けて弓を構える──アローレインの構えだ。その背後、サルーインの周りには炎が踊る。次に来るのは火の鳥かヘルファイアか──その時。
「絶望を晒すのは・・・お前だ」
古刀を手にしたグレイが、倒れた3人とサルーインの間に飛び込んだ。その手の中で突然、刀が輝きだす──
「あれ? あの刀・・・」「まさか、あれは!」「まま間違いありません! あれはリガウ島に伝わる、古代王家の伝説の宝刀──鬼神刀です!」
今の今まで、攻撃力はそこそこあったものの見かけはただの古い刀だったものが、太陽の如き光を放ち始めた。
「しかし何故? グレイさんは鍛えるのを止めていたはず、何故今・・・?」
エルマンの疑問に、グレイは即座に答えを返す。「お前たちがガ○ダムだからだ」
「いやだから・・・やっぱり意味分かんねぇんだけど」
「ガ○ダム──お前たちの力、借りるぞ!」
目も眩むほどの光を放ちながら、グレイは邪神に向かって一気に駆けだす。「俺が。俺たちが──ガ○ダムだ!!」
声と共に飛翔するグレイ。彼に向けて繰り出されるゴッドハンド。その拳は炎まで帯びている。
それでもグレイは動じることなく、刀で神の拳を弾き──必殺剣・月影の太刀を繰り出した。
激痛のあまりか、邪神の絶叫が天に溢れる。傷つけられた怒りでサルーインは再び柱を爆砕し、剣の雨を降らせようとする──






「それこそが、真サルーインの最期でしたよぉ!
グレイさんに率いられた我々ガ○ダム4人は、こうして見事、真の力に覚醒した邪神すらも打ち倒すことに成功したわけです!」
ウエストエンドのパブにて。
一回目の興行を終えた後、バーバラとナタリーはエルマンの長い長い陽気なお喋りを聞きながらひと休みしていた。
「どうも信用できないねぇ〜。それで本当に、世界は平和になったのかい?」
「そりゃ勿論! 覚醒したグレイさんのおかげで、サルーインは力を失って剣の雨も発動できずそのまま倒れ、私らは光に包まれて──
って、姐さんだって見てたんでしょ!? 私らの一大活劇を。ホラ、あの世とも天国とも冥府とも言えそうな場所から!!」
「縁起でもないこと言わないでおくれよ、人を死んだみたいに・・・って、確かに一度死んだらしいんだけどね」
バーバラはやる気が全くなさげにそっぽを向く。「果たして本当にそれで、世界は元に戻ったのかねぇ・・・」
「それこそ縁起でもない」エルマンはヤケになってバーバラになおもつっかかる。「それに私、見事姐さんがたとのお約束、果たしてみせましたよ! 見てくだすったでしょ、あの私の乱れ雪月花!」
「あんまりにも突然だったから、ちゃんと見えてなかった。ゴメン、もっかい見せて」
「エ・・・・・・?」絶句するエルマン。ナタリーがさらに追い打ちをかけた。「ホントにごめんね、エルマン。私もちゃんと見てたはずなんだけど、早すぎてよく見えなかった・・・」
「あ、あ、あ、貴方がたはああああっ!」「だからお願い、もう一度見せてくれない?」
「ですから何度も言ってるじゃないスか、やろうと思ってすぐ出来るような代物じゃないんですよ! 全くもう・・・あれ?」
エルマンはふと、バーバラの背後に近づいてきた影に気づいた。ツインネックのギターを抱え、茶色い帽子を目深に被った詩人。その首には燦然と、伝説の宝石・アメジストが光り輝いている──
「まさか・・・もしかして、やっぱり?」
「そのまさか、みたいだね。エルマン」石化の術にでもかかったかのように固まってしまったエルマン。バーバラは後ろを見もしなかったが──何となく彼女は覚悟していた。次に来るであろう詩人の言葉を。
「姉さん、踊り子だろう? ひとつ、踊ってみせてくれないかい?」
──やはり、自分たちは何も解放されてはいなかった。
一つだけ深くため息をつくバーバラ。見ると、足元では哀れな小さな会計係が絶望のあまり崩れ落ちている。慌てふためいたナタリーが彼を慰めていた。それでもバーバラは立ち上がり、颯爽と言い放つ──「エルマン、何してるんだい。さっさと二回目、準備始めるよ」
「は、はいぃ・・・」精一杯顔を上げるエルマンだったが、その顔は涙と鼻水でぐちょぐちょだった。
「なんて顔してるんだい、お客さんびっくりするじゃないか! ナタリーも早く!」
彼女の声に弾かれたようにエルマンは飛び上がり、慌ててナタリーを連れて奥へ走って行った。バーバラは振り返り、詩人の顔をじっと見定める──相手の目からは瞳の色すらも、何も読み取れない。全てを知っているはずなのに、一体この男は何を考えているのか。
とにかくもう分かった。自分たちはまたしても元の時間に戻されてしまった──
ならば、この状況を楽しみながら、出来る限りのことはやってみようじゃないか。せっかく生きていられるのだから──どんな時でも楽しまなければ、損だ。
バーバラは詩人に向かって可憐な微笑みを見せる。「お待たせ。ゆっくり見ていってね」
彼女は大慌てで客集めに奔走するエルマンの背中、そして閉ざされたままのパブの扉を交互を眺めながら、ふと呟いた。
「さて──今度は誰が、アンタを迎えに来るのかしらね」


 


 

 

 


何故だかいつの間にやら完全なループ物になってしまった感・・・
どうやったら終わるのかっていったら勿論、プレイヤーが飽きるまでに決まって(ry
それはともかくとして、真サルーイン戦の描写はジュエビ戦同様ほぼほぼ実プレイに基づいてますが、一部は脚色入ってます。例えばエルマンの乱れ雪月花は・・・実際は負け戦の時に発動してました。お話的にあまりにも勿体ないから勝った時に発動してたってことに。
あと勿論、古刀が戦闘中にいきなり鬼神刀になるなんてことはない(はず)。ここはガ○ダムの力で何とかなったってことで・・・(^^;) あとは・・・・・・もうホントに色々脚色してるなぁ。ラファエルもこんなにはディフレクトしてくれてないし。最後こんなに超絶大ピンチにもなってなかったと思う。
それから、体術一人5連携について。これも実際はやってません(負け戦の時も使ってない)。だって流石に恐い・・・最大でLP5消費してしまうし、ウコムの鉾経由ODと合わせたら一気に8も消費。こんなの通常時でも恐ろしくて使えません。エルマンじゃなきゃ。やっぱりLP18はなんのかんの言っても魅力的♪
あとは今回、今まで全くもって影の薄かったエロ・・・もとい、詩人さんを目立たせてみました。普段のプレイでも使うことが少ないからなー・・・最後まで連れていけないと分かっているキャラは何となく使いづらい。
それにしても今回ものすごく強引に最後にガ○ダムネタ突っ込んでしまった。グレイさんに例の台詞を言ってもらいたかったってのもありますが。

 

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